シーズン1、第10話「パーティーはこりごり:Homer's Night Out」March 25, 1990(日本初回放送:1992年10月18日、録音日:1992年10月1日)
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<以下、ネタバレになります>
【画面】(台本上の通信欄)
・02:41 字幕「6ヶ月後」
・06:06 社員(歌)
・06:33 字幕「タラ料理$4.95」 COLD PETRAT「冷たいネズミ$4.95」
・10:19 字幕「水着シーズン到来」Bathing
・10:27 クイックEマート
シーン転換による場面説明
・12:32 字幕「レディー・サービス 同伴なしの女性 ドリンク無料」
欄外に"レディース・デー"の記載も。表現を変えるとしたらこれという指示までしっかりと書かれているわけですね。
※DVD版(配信にも流用)の字幕は「1人で来店の女性 ドリンク無料」。
・13:40 警官1「こちら十一号車 暴力事件発生 応援を要請します…」
ホーマーとバーニーの会話を後ろで聞こえる警察の声は、画面欄に記載されています。
・14:02 発電所
シーン転換による場面説明
・14:03 字幕「原子力発電所」
・17:48 よびこみ「さあーピチピチがうじゃうじゃいるよ」
ホーマーのセリフと重なるため、画面欄に記載されています。
・18:39 歌手「レディース&ジェントルマン スプリングフィールドきってのシンガーがメローなナンバーをお聞かせします!」
カシミアのセリフと重なるため、画面欄に記載されています。
・19:25 ホーマー落ちる
状況説明
【音声】
・01:48 ユージーンについて話すホーマーのセリフ、台本上は「真ッ赤な顔してメンテナンスに新しく入った女の子くどいてたよ」とあるところ、最終的な音声では「真ッ赤な顔してメンテナンスに新しく入った女の子くどいちゃってさぁーあ」という、よりしゃべり言葉っぽくかつホーマーの可愛げがでるセリフに変更されています。
・02:44 うがいするホーマー、台本には大平さんによって「ガラガラガラガラ」と書き込みがあることから分かるように、よーく音声を確認してみると元々のうがい音のSEに大平さんのガラガラがミキシングされています。すごいこだわり具合!!
・03:28 いつの間にかユージーンに差をつけられたホーマーのセリフ、台本上は「違う 俺の上司だ」とあるところ、大平さんによって「違う」が消され、「いや」と書き換えられています。
・03:52 バートにスパイカメラの入った箱を差し出す女1(郵便配達員)のセリフ、台本上は「あんたのスパイカメラはここよ ほらッ」とあるところ、最終的な音声では「ほらッ あんたのスパイカメラはここよ まったく」と、キャラの口の動きにぴったり合うセリフに変更されています。
・05:02~ 大平さんによって「呑む」とメモ書きがされています。
他のキャラのセリフに重なるようにホーマーがビールを飲んでいるシーンであることを示しているものです。
・06:29 ウエイターに注意されたホーマーのセリフ、台本上は「うるさいな」とあるところ、大平さんによって「うるさいな」の「さいな」が「ヘェなァ」と書き換えられています。
以降、ホーマーの口癖的に使われる「うるヘェ」は、ちょっと嫌なやつに聞こえちゃうホーマーのセリフを、マイルドにどこか憎めないキャラに演出するのに非常に役立っているように感じます。
大平さんのアイディアとセリフ回しで、わがままホーマーをより愛すべきキャラに仕上げているわけですね。
・06:30 ホーマーたちが酔っ払って歌う"Barnacle Bill the Sailor"(アメリカの飲酒歌で、原曲は民謡の"Abraham Brown")。
台本には、吹き替え版の歌詞「タコの水兵さんがタンカをきったー」がありますが、最終的には原音(Barnacle Bill the Sailor)流用となっています。
本国から音声素材が個別に来るわけではなく、完パケ素材から音を消して、セリフから効果音まですべて日本側で制作していた時代からディレクターをやられていた春日ディレクターだけあって、シンプソンズでもとにかくすべて吹き替えるように努められていたようですが、ここについては時間も短いからか吹き替えされなかったようです。
・07:08 この回の原語版では、レニーの声を担当声優のハリー・シェアラー氏ではなく、ハンク・アザリア氏が自身の担当キャラのウィガム署長っぽく演じられています。
しかし、吹き替え版では、レニーがよくしゃべるようになる後のシーズンでハリー・シェアラー氏が演じるようなレニーの声の出し方を、この時点で吹き替え声優の朝戸鉄也さんがやられており、もう驚愕!!
こういうところからも、本当にそれぞれのキャラクターにピッタリの声優の皆さんがキャスティングされていたのだなぁとしみじみ。
・07:20 何かを食べているホーマー、台本上には大平さんによって「食う」との書き込みがされています。
・07:29 プリンセス・カシミア登場後のホーマーのセリフ、台本では、原語版に忠実にユージーンを指している「見ろもじもじしてるぞ」となっていますが、最終的な音声では、ユージーンの表情やこの後の展開を加味してか、ホーマーのプリンセス・カシミアを見ての感想としてのセリフ「見ろムチムチしちゃってもう!」に変更されています。
オリジナルのテイストを大幅には崩さず、ストーリー上自然に成り立つセリフ変更は、良き時代の"テレビ吹き替え"ならでは!
・07:49 ホーマーのセリフ「普段はマンボしか~」の上に、大平さんによる"ドア オフから"との書き込みが。
これ、バートが扉を開ける前(=ホーマーが映る前)にホーマーのセリフが始まることから、それを示したメモ。
・08:25 写真を見たマーティンのセリフ、台本上は「凄いねコレ 刺激的で」とあるところ、最終的な音声では、「凄いねコレ とっても刺激的で」に変更されています。
・10:16 原語版ではバーンズがホーマーのことを"self-styled Valentino(直訳:自称・ヴァレンチノ 字幕:色男)"と呼んでいますが、吹き替えでは、「フリオ・イグレシアスもどき」に。
ちなみに、以下のエピソードでも、吹き替えでのフリオ・イグレシアスアレンジがされています。
(春日正伸さんのご子息・一伸さん演出)
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・10:38 アプーにどこかで見覚えがと言われたホーマーの返答。
原語版では「フレッド・フリントストーン」になっている部分、吹き替え版では「ロバート・レッドフォード」にアレンジされています。
ちなみに、原語版のフレッドは、本ブログで何度もご紹介していますが、大平さんが吹き替えを担当されていたキャラでもあります。
・11:43 バートの告白を受けての2人。
原語版では、ホーマー"Why you little!"、マージ"Why you big!"と、ホーマーの口癖にかけた言葉遊びになっているのですが、吹き替え版では"Why you little!"は「お前って奴は!」になっていることから、そこにかけてマージのセリフが「貴方って人は!」になっています。
翻訳家の徐さんのセンスがこういうところでもさく裂するわけですね!
・13:32 急に虚勢を張るバーニー。
台本では、「このアパートは俺みたいなヤンエグが集まってるから~」とあるところ、最終的な音声では「ヤンエグ」が「エリート」に変更されています。
ヤンエグとは、青年実業家を意味するヤング・エグゼクティブの略で、バブル期の流行り言葉なのですが、基本的に流行り言葉は使わないという日本語吹き替え版の暗黙のルール的に変更されたものと思われます。
・14:09 コーヒーを直飲みするホーマー。
台本には、大平さんによって「呑む チューッ」と書き込まれており、原音流用ではなく、しっかり大平さんの声になっています。
・16:29 マージと話すホーマー。
台本上、「分かっているとも!腹はへるし 服は臭いし体中痛いし」とあるところ、大平さんによって最後に「その」と書き加えられ、セリフがホーマーの口の動きピッタリに!
さらに動揺している感じもアップしているように聞こえませんか?
・16:52 ホーマー「それじゃ俺はどうすりゃいい?」とあるところ、大平さんによって最後に"の"が書き加えられています。
たった1字の追加ですが、ホーマーのマージに甘える感じがとても良く出ていますよね。
・17:09 マージにバートに手本を示すよう言われるホーマー。
台本上は「分かった 何でも仰せの通りに致します奥様…」とあるところ、大平さんによって「分かりました 仰せの通りに致します奥様…」に変更されています。
より遜っている感じが出ますね。
・17:42 別の女の子を紹介されるホーマー。
台本上、「そうじゃないんだ」、「息子の教育に来たんだ エイプリルはどこ!?」とあるところ、最終的な音声ではそれぞれ語尾にアレンジが加えられ、「そうじゃないんだってば」、「息子の教育に来たんだ エイプリルはどこよ!?」に変更されています。
本当に、細かいところまで一切妥協なしのこだわり具合です。
・20:18 ホーマーの歌!
「アバウト ア ミリオン ガールズ」
・21:24 ホーマーの演説シーン。
台本上、「俺はいくら美人でも知らない女のバタフライに一ドル札をはさむより~」とあるところ、大平さんによって「札をはさむより」の"むより"が消され、"んだりするより"と書き加えされています。
さらに最終的な音声では"も"が追加された「札をはさんだりするよりも~」になり、こちらもホーマーの口の動きピッタリに合わせされています。
・おまけ(今回のワンポイント)
The Simpsons 20 Years Mini Figure(Princess Kashmir)
The Promotions Factory社製。20周年記念のミニフィギュアシリーズで、ツウなラインアップでちょっと話題になりました。