シンプソンズ・ファンクラブ・ブログ

「ザ・シンプソンズ」を日本で広めるために日本語吹替版のエピソードガイド、グッズを買えるお店の紹介、大平透さん使用のアフレコ台本の研究、等々を掲載しています。

大平さんのシンプソンズ台本:シーズン3、第2話「リサの愛国心:Mr. Lisa Goes to Washington」

シーズン3、第2話「リサの愛国心:Mr. Lisa Goes to Washington」September 26, 1991

(日本初放送:1993年9月4日、録音日:1993年8月12日)
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WOWOW放送時にシーズン3の1話目として放送されましたが、奇しくも本来の第1話「マイケルがやって来た!」が欠番になったことにより、現在は正真正銘のシーズン3第1話となった本エピソード。
WOWOWでの放送も吹き替え版の収録も、第1期放送(シーズン1、2、3#1と#3の計37話)後、約半年の休止期間を経て、再スタートしました。それに伴い台本の表紙の色も今回から変わっており、話数のナンバーリングもリセットで“第1話”となっています。
(邦題もこのタイミングで「シンプソンズ」からオリジナルに沿った「ザ・シンプソンズ」へ変更になっています)




<以下、ネタバレになります>


【画面】(台本上の通信欄)

・0:55 原音 貴方はもうあたっているかもしれません

翻訳家の徐さんの手にかかるとこれ("You may have already won.")が、「当選してたらおめでとう」に変わります!

・01:14 字幕「ホームセキュリティ信託」(ホーム証券信託ともいえます)

・05:01 字幕「スプリングフィールド国立公園」

・05:22 字幕「退役軍人センター」

・05:55 字幕「ミネソタ」(アウト可)

画面に“MN”との文字が映る時間が短いことから、画面上に文字が出ていないタイミングから字幕を出してもよいとの指示。

・06:05 字幕「アラバマ

・06:14 原音 気前よく(自由とひっかけてる) バランスをふりかける(バランスよくかけている)
ミネソタ少女のセリフ“Stir in two cups of checks, sprinkle liberally with balances.”は、「抑制を2カップかきまぜ 自由をバランスよくふりかけます」に。

・06:19 字幕「クィーンズ」

・07:57 スチュアード

画面に登場した人物の説明。

・08:03 原音 バースプーン(スウイズルスティック(カクテル用)かきまわし棒)
“propeller-shaped swizzle stick”は、「プロペラのマドラー」に。

・08:33 字幕「ワシントンDC ダレス国際空港」

・08:35 字幕「シンプソン様」

・08:45 字幕「アメリ国税局」(アウト可)

・08:52 原音 ウォーターゲイトとしか言ってない(ここが、ウォーターゲイトビルかどうか不明。たとえウォーターゲイトビルでもホテル施設があるならこういってかまわないと思う)

マージのセリフ「ウォーターゲイトホテル」に対する注釈。日本人的に耳で聴いたときに「ホテル」がついている方が親切と判断されてのこのセリフのようです。とにかく視聴者への優しい心遣いですね。

・09:06 部屋

状況説明。

・09:27 原音 ファーストベッドサイド、つまりいい方に寝る
吹き替えではバートらしい「俺でかい方に寝る!」というセリフに。

・10:09 字幕「歓迎 決勝出場者」

・10:36 ウェスティングハウス 発明起業家

クロウリーがトロングを紹介する際のセリフに対する注釈。

・11:56 字幕「国立航空宇宙博物館」

・13:35 字幕「忙しい合間をぬって」(アウト可)

・14:02 75セントコインなんてない 架空の人か?

ウィニフレッド・ハウ記念碑を見たいというリサのセリフに対して。
実際、女性活動家のハリエット・ビーチャー・ストウとジュリア・ウォード・ハウ(さらに、コインのデザインはスーザン・B・アンソニー・ドル)をイメージして創作された架空の偉人のため、台本の注釈のとおりでした。
ネットが一般的でない時代、吹き替えを制作される方々によっては実際にいそうな架空の人物を出されるほど厳しいことはないですね。

・14:50 字幕「民主主義のルーツ リサ・シンプソン」

・15:55 食品用エレベーター(ジェファソンは建築家でもあった)

“dumbwaiter”は吹き替えでは割愛され、「その他もろもろ…」になっています。

・16:40 字幕「チップ 20ドル」

・16:55 字幕「未来の愛国者賞 会場」

・18:53 字幕「下院議員ボブアーノルドのオフィス 午後1:12」

・19:10 字幕「FBI本部 午後2:05」

・19:16 字幕「下院 午後2:44」

・19:31 字幕「ホワイトハウス 午後3:18」

・19:43 字幕「ケネディセンター 午後3:39」

・20:05 原音 あのすばらしいことばをおもいだすのです “国旗”ということばを

“I'll always be reminded of that wonderful word, “flag.””を日本語らしい表現でアメリカっぽいセリフに仕上げるため、翻訳家の徐さんはこの部分に「こうつぶやくのです “ありがとう アメリカ”と」をあてはめられました。とても美しい翻訳!


【音声】

・01:33 がっかりなホーマー
台本上は「いつも100万当たったって通知が来ると何かウラがある」とあるところ、最終的な音声では「いつも100万当たったって通知が来ると何かウラがあんだからもうに。
ホーマーらしい言葉遣いにしつつ、口パクピッタリに

・02:17 レニーに説教するホーマー

台本上は「黒パンはいりませんからどうぞ教育を下さい」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、語尾に「って」が追加されています。

・03:07 突如読書会の告知をするホーマー
台本上は「感動的な大自然の話をしてやるから有難く聞け」とあるところ、最終的な音声では語尾に「よ」が追加されています。
こちらも口パクに合わせた追加かと思われますが、大平さんホーマーの本当は温かいんだという部分がたった1文字からでも非常によく出ているかと思います。

・03:24 マージに痛い部分を突かれるホーマー

台本上は「そんな事まだ…助かったって」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「そんな事まだ…ナンで知ってんだになっています。
オチが強調され、より面白いセリフに。大平さんの緩急の付け方、テンポに加え、練りに練ったセリフで作品と向き合われていたことがよく分かります。(その証拠の1つに、さらに別のセリフ候補として「どうして判るんだ」とのメモもある事が確認できます)

・03:45 結婚を持たせる7つのスパイスから引用するホーマー

台本上は「マージ お前はいい体してるよ 俺のビキニパンツ姿が見たかったらいつでもそう言ってくれ」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「マージ ホントお前はいい体してるよ 俺のビキニパンツ姿が見たかったらいつでもそう言ってになっています。
本を読みながらというシチュエーションのため普段とはちょっと違ったセリフ運びに、語尾のどこか憎めないホーマーらしさを演出する「してね」、さらにその後の一城さんマージの呆れた「どうも有難う」までの流れ、とにかく凄い!

・04:13 豪華旅行を期待していたホーマー

台本上は「あー子供用か」とあるところ、大平さんによって手が加えられナンダ子供用か」に。
ここのテンション急降下なお芝居によってより笑えるセリフに仕上げられています。

・07:20 何を聞かれてもぽかんなホーマー。

言葉を使わない表現までお見事な大平さん。過去にはタツノコプロ作品の「カバトット」にて言葉を話さないカバを演じられていました。(ちなみに、相棒のトットの2代目声優はバートの堀さん)

・07:59 男性客室乗務員に無理難題を出すホーマー
台本上は「トランプ、メモ用紙…スリーピングマスクただのもの全部持ってきて」とあるところ、最終的な音声では「トランプ、メモ用紙…スリーピングマスクただのもの全部持ってきちゃってになっています。
口パクぴったりにするため、ホーマーらしい言葉遣いを当てはめられた大平さん。

・08:45 アメリ国税庁舎に向かって叫ぶホーマー

原語版では“Boo!”、台本では守銭奴!」になっていたところ、大平さんによって手が加えられ「税金返せーッ!」になっています。(別のセリフ案として、「金食い虫!」とのメモも)
ヤジらしく乱暴に声を裏返すテクニック、そしてお馴染みのギャグシーンに欠かせない大平さんのワードセンスで、こちらも素晴らしいシーンに。

・09:20 靴ベラにハマるホーマー
台本にある「はい履いて はい脱いで」という文字が、大平さんの手にかかると、愉快に踊りだします。

・09:52 安眠妨害されるホーマー

台本上は「《 》こんなとこにチョコ置いて!」とあるところ、最終的な音声では「《アラ ドッ》こんなとこにチョコ置いてもう!」になっています。

・10:20 雑誌をべた褒めするホーマー

台本上は「あれはホントに、ホントに、ホントに…いいね」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「あれはホントに、ホントに、ホントに…いい_と、語尾の「ね」を削られています。
セリフのテンポと声の高低差でここまで面白くできるのか、と脱帽です。

・11:56 セントルイス号に乗っているバート

例によってバートのセリフは台本には指示なしで演者さんに委ねられています。
堀さんが原語版を参考に魅力たっぷりに声を吹き込まれています。

・12:13 珍しくマージと立場逆転なホーマー

台本上は「バカな事言ってるよ!」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「バカな事言うんじゃない」になり、さらに最終的な音声では「バカ言ってんじゃないよ」になっています。
S1#9「恋におちて」同様、「三年目の浮気」からの引用。
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・13:05 ロビイストに怪しいオファーをされるアーノルド下院議員
台本上は「ここはまずい いつも使っているいい場所があるんだ」とあるところ、最終的な音声ではいやいやいやいや ここはまずい いつも使っているいい場所があるんだ」になっています。
シリアスな外画風シーンにキャラクターを、クラスティの島田さんが演じられています。
ぜひほかのキャラとの演じ分けをご堪能ください!

・14:43 アーノルド下院議員たちの目論見を知ってしまったリサ

神代さんのリサの泣きのお芝居は、心にグッときます。

・16:07 怪しい議員の会話
原語版では言葉という言葉を発しておらず、台本にもセリフの記載はありませんが、最終的な音声では青い髪の男の口パクに合わせて「例の件よろしく」と、モー役の稲葉さんが兼役で声を吹き込まれています。
この追加で、リサのガッカリ感がより強調されますね。

・16:47 マッサージを受けているバートを見たホーマー

原語版では“I'll room service you!(直訳:ルームサービスしてやる!)”なんですが、徐さんの翻訳で「尻叩きのルームサービスだ」になっています。
より日本版シンプソンズらしい親切なセリフになっていますよね。

・16:55 授賞式会場で歌う歌手

台本上は「赤字の歌~赤字の歌~予算の穴は12ケタの数字びっくり それが赤字 どうにもならないのが赤字 これが赤字の歌~ ありがとう!」とあるところ、最終的な音声では「金ないぞ~オウイェイ金ないぞ~予算の穴が埋まらないオウイェイそれが赤字 どうにもならないさぁこれが赤字だ~Thank you!!」になっています。
歌うのは初代ネルソン役の安西正弘さん。舞台でのミュージカル経験も豊富な方なので、歌詞の運びのレベルがやっぱり違います!ディズニー的には「リトル・マーメイド」(TVシリーズ)のセバスチャンですからね、美声が気持ちいい!

・17:22 次々に紹介される審査員たち

皮肉たっぷりの肩書を、短い時間の中にセンス良く日本語化して詰め込まれる、翻訳家の徐さんのテクニックが光ります。

・20:37 また歌っている歌手
台本上は「貿易不均衡 何とかしてくれ 貿易不均衡イヤだよ もォ~」とあるところ、最終的な音声ではモノ買って日本~お願い買って~ 貿易不均衡イヤだよ もォ~」になっています。
日本版スタッフのセンス、そして何より引き続き安西さんの技が光ります!

・21:40 いいとこを持っていく歌手
台本上は「あの子の話をしようリサ・S 8才なのにスキャンダル ほりあてた 灰色高官ぶちこんだ それもたった一日で これこそ天才 リサは天才」とあるところ、最終的な音声では「リサの話をしよう 小さな8才の女の子 それが驚きスキャンダル見つけた われらのヒロイン 天才少女」になっています。
安西さんの歌、とにかく最高です!こういうところからも、改めてファミリーのみならず脇を固めるすべてのキャストまでとてつもなくプロフェッショナルな、すごい座組だったのだなあとしみじみ思います。