シンプソンズ・ファンクラブ・ブログ

「ザ・シンプソンズ」を日本で広めるために日本語吹替版のエピソードガイド、グッズを買えるお店の紹介、大平透さん使用のアフレコ台本の研究、等々を掲載しています。

大平さんのシンプソンズ台本:シーズン1「バートのフランス日記」

シーズン1、第11話「バートのフランス日記:The Crepes of Wrath」April 15, 1990(日本初回放送:1992年11月1日、録音日:1992年10月8日)

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本国では第11話として放送されたエピソードですが、台本の表紙のナンバリングからも分かるように、国内(WOWOW)ではシーズン1の最終話(第13話)として放送されました。


<以下、ネタバレになります>


【画面】(台本上の通信欄)

07:58 字幕「アルバニア ティラナ」

08:22 字幕「フランス パリ」

08:24 フランス空港(シーン説明)

08:56 字幕1「モーリス」、字幕2「アメリカの留学生が来たら楽をさせてやるからな」

ここからフランス語のセリフが頻繁に登場するわけですが、字幕欄に字幕が入りきらないため、本編中のセリフページとは別に、冒頭にフランス語字幕だけを記したページが用意されていました。
また、セリフ欄にもフランス語の吹き替え用のセリフが記されていますが、バートとは違う言語を喋っているという演出のためか、セザールとユーゴランのセリフは最終的には吹き替えはされず、原語版流用の字幕処理となっています。
(字幕の翻訳はWOWOW放送時のものなので、DVDの字幕(配信にも流用)とはちょっと違っています。)

↑ちなみに、吹き替えするならというセリフ案は、字幕の翻訳とはちょっと異なります。
ここ最近、字幕と吹き替えで言ってることが違う!とクレームを入れる方がいらっしゃるようですが、原語版に忠実であることが必ずしも日本語的に正しいとは限らないので、吹き替えというものには字幕とはまた違った工夫を施す必要があるのです。

10:09 字幕3 ユーゴラン「金目のものばっかりだ」

10:14 字幕4 セザール「着られないのは売っちまおう」

10:17 字幕5 ユーゴラン「ほらモーリス ぴったりだ」

12:25 字幕6 ユーゴラン「うまいソーセージだ」

12:28 字幕7 セザール「ワインを取ってくれ」

15:17 字幕8 アディール「ツバメから巣へ ツバメから巣へ」

15:21 字幕9 アディール「応答してください」

15:29 字幕10 軍人「ツバメからやれると言ったろ」
※この軍人役、台本の香盤表にはスキナー校長役の青森伸さんのお名前がありますが、最終的には原語版流用になっているため、吹き替えはされていません。

16:26 字幕11 セザール「今までで1番いいワインになる」

16:30 字幕12 ユーゴラン「3日しか発酵させてないぞ」

16:33 字幕13 セザール「そういう時は良心に背いて不凍液を入れりゃいいんだよ」

16:40 字幕14 「入れすぎると毒になるが」

16:43 字幕15 「適量なら 丁度いい風味がでる」

16:47 ユーゴラン「入れすぎだ誰か死ぬぞ」

16:50 字幕16 セザール「死ぬだ?バカ言え」

17:06 字幕17 「見てろ 飲んだって何ともねえから」

17:29 字幕18 セザール「ほら大丈夫だ さあ不凍液を買ってこい」

17:34 字幕19 ユーゴラン「でも雨だよ ワイン作りは明日にしよう」

17:37 字幕20 セザール「3日も待ったんだぞ」

17:40 字幕21 ユーゴラン「じゃあ ガキを行かせろ」

18:38 字幕22 バート「2か月!」
業務連絡 パズドュモアと聞こえますが"2か月"というのはドュモアだそうです カクニンお願いします

(→結果的に、堀さんの吹き替えではドュモアになっています)

18:40 字幕23 「一言も喋れない」

18:42 字幕24 「ウソ フランス語喋ってる」

18:45 字幕25 「すげえ!」

18:46 字幕26 「助けて 2人の男にこき使われてるんです」

18:51 字幕27 「食事もくれない 夜は床で寝てる」

18:54 字幕28 「ワインに不凍液を入れて 僕の帽子も返してくれないんです」
18:59 字幕29 警部「ワインに不凍液?それは大罪だ」

字幕30 欠番

19:03 字幕31 警部「来なさい もう大丈夫だよ」

19:06 字幕32 バート「ご恩は一生忘れません」

20:18 字幕33 「刑務所でワインを作れ」
(ユーゴランアウト)

20:24 字幕34 「交換留学制度のおかげでドジふんじまった」

21:47 字幕35 バート「親父 みっともねー」


【音声】

01:57 階段から転落後のホーマーのセリフ。

台本上は大平さんによってこんな感じに処理されていました。
これだけでシーンが目に浮かびますね。

03:13 スキナー母:アグネス、初登場。

(初登場時の台本上の役名は"グロリア"になっていました。)
春日ディレクターが手掛ける吹き替え作品の1970年代からの常連であった、鈴木れい子さん(カネボウねるねるねるね」CMの魔女の声、「ジョジョの奇妙な冒険」のエンヤ婆、「クレヨンしんちゃん」の隣のおばさん(北本れい子)等々…)が、オリジナルキャストのトレス・マクニール氏を忠実に日本語化するとともに、よりパワフルに演じられています。
初期のアグネスは大人しめで、次第にヒステリックキャラに移行していくわけですが、シンプソンズの共演者の方は口々に、「この役はれい子さん以外出来ない!!」と語られていました。

03:58 アグネスのセリフ、台本上は「ちょっとお手洗いに寄ってっていいかしら お粉をはたかないと…」とあるところ、最終的な音声では「ちょっとお手洗いに寄ってってい~い? お粉はたかないと…」になっています。

ちょっとの変更なのですが、よりマダム感が出ていると思いませんか?
また、元々のセリフは"I think I need to make a stop at the little girl's room.(直訳:女子トイレに寄っていかなきゃ)"なんですが、このセリフの中に「お粉はたく」と入れ込む翻訳家の徐さんのセンスも相変わらず抜群です。

05:39 動揺するマージに対するホーマーのセリフ、台本上は「まあ続きを聞いて」ですが、最終的な音声では「まあ続きをきーけって」になっています。

07:11 大喜びのホーマースキナー校長

2人が同時に歓喜の雄たけびを上げるわけですが、台本上にはしっかりセリフが…。

07:40 出発前のバートに声をかけるホーマーのセリフ、台本上は「…物をこわしたり 人にけがをさせるんじゃないぞ」とあるところ、ホーマーの口の動きからしてセリフが足りないからか、大平さんによって「判ったかバート」と書き足され、最終的な音声にも反映されています。

大平さんの"ホーマーならこう言う"という工夫の数々が、ホーマーというキャラを、吹き替え版シンプソンズを、盛り上げていくわけですね。

07:50 バートを見送るファミリー

ここでもみんな同時に喋っていますが、台本にはキャラ別のセリフがしっかりと書かれています。

09:06 ステイ先のボロ家を見て驚くバートのセリフ、台本上は「《 》こりゃひでぇー」となっているところ、最終的な音声では「《いやー》こりゃひでぇやー」になっています。
セリフの話始めと、最後のバートの口の動きが映るシーンまで、ちょっと言葉が足りないためか、語尾の"やー"が追加されたものと思われます。
堀さんのこんな感じの言葉遣いもとんでもなくかわいいんですよね。

09:31 自己紹介するセザールユーゴラン
台本上ではキャラ名がシザーユーゴリンとなっていましたが、現場でフランス語読みに修正されたようです。

10:22 バートに怒鳴る2人。
原語版ではうなり声だけなのですが、吹き替え版では関西弁の「じゃかぁし~いっ!」(台本上では《 》のみなので、現場で追加されたセリフです)になっています。
これ、西部劇も数多く演出されていた春日ディレクターが、過去に手掛けた作品(今ほど関東の放送業界で関西弁が一般的でなかった時代)の地方出身キャラに関西弁を喋らせようと試みたりするなど、同じ日本語でも方言を用いることで出身地域を表現されようとしていたことと同様に演出されたものと思われます。

13:13 アディールの言葉にウルウルのホーマー
大平さんによるホーマーの泣き表現「ウズウズ」と台本上にメモがあります。

14:20 プルトニウムアイスレーションモジュールを見に来ているホーマーアディール
大平さんがセリフの上に「カブセ」とメモ書きをされていますが、これは防護服を被っていることから、しゃべり声を籠った声にするためのもの。
ベテランならではのテクニックがさく裂するシーンであるわけです。
(エフェクトを使用せず、腕かなにかを口の上に当てて、収録されたものと思われます)

15:48 マージからの手紙を読みながら咳き込むバート
台本上にはセザールのセリフとして、「シランズ!(フランス語)」とあり、画面欄には「日本語なら(早く寝ろ!)」とありますが、最終的な音声では「黙れ!」と、咳1つで注意されてしまう、肩身の狭すぎるバートを演出するためのセリフになっています。

18:38 ここからのバートのフランス語は、堀絢子さんによるフランス語吹き替えになります!
配信版では本国のナンシー・カートライト氏のフランス語版やフランス版吹き替えにも切り替えられますので、ぜひ各国バートの声を聞き比べてみてくださいね。

19:15 マージから何を持って帰って来たか聞かれたホーマーのセリフ、台本上には「あーアディールに頼まれた青写真あの子は好奇心のかたまりだね そのうち発電所でも作るつもりなのかな」とあるところ、大平さんによって加筆、削除がされ、最終的には「あーアディールに頼まれた青写真なんだが、あの子は好奇心のかたまりだね そのうち発電所でも作るつもりじゃないのかねえ ヘヘヘヘ…」になっています。

20:21 マージから声をかけられたバート
台本上は「アレッ親父はどこ」だけですが、最終的な音声ではその前に「ただいま」が追加されています。
原語版で"Hey"となっている部分に「ただいま」を当てはめたことが分かります。