シンプソンズ・ファンクラブ・ブログ

「ザ・シンプソンズ」を日本で広めるために日本語吹替版のエピソードガイド、グッズを買えるお店の紹介、大平透さん使用のアフレコ台本の研究、等々を掲載しています。

大平さんのシンプソンズ台本:シーズン2、第5話「ダンシング・ホーマー"Dancin' Homer"」

シーズン2、第5話「ダンシング・ホーマー"Dancin' Homer"」November 8, 1990(日本初回放送:1992年11月21日、録音日:1992年10月29日)

本エピソードの邦題はWOWOW時代には珍しく原題をそのままカタカナにしたもの。
simpsons333.hatenablog.com


<以下、ネタバレになります>


【画面】(台本上の通信欄)

・01:21 モーの店
状況説明。

07:33 売り子1(伊藤栄次さん)のセリフ

ビ~ル~ダフビ~ル~との記載のみで、あとはAD(アドリブ)との指示が。

10:10 字幕「しめ出し」

11:21 字幕「出演 ホーマー・シンプソン」

12:18 字幕「ダンシング・ホーマー」

14:36 字幕「Like New」

15:04 「このセリフ原音と少し変えました」
同級生に別れを告げるリサのセリフ。音声欄参照。

15:30 字幕「ダンシング・ホーマー お別れナイト」

17:06 字幕「To the Brave men of the Army Reserve」

17:49 ホテル
状況説明。

18:16 球場
状況説明。


【音声】

01:30 モーの店でキャピタルシティでの出来事を話し出すホーマー。

台本上は「~どうやって負け犬になったか飲み屋でクドクド クダまいて話す事だ 俺はそれだけはやりたくないね」とあるところ、台本にも大平さんによって手が入れられ、最終的な音声では
「~どうやって負け犬になったか飲み屋でクドクド クダまいて話す事だ 俺はそれだけはやりたくないんだよになっています。
語尾を細かく調整されており、この辺りにも声優のパイオニアならではのこだわりを強く感じます。

01:53 スタジアムへの客の送迎もやっているオットー。
台本上は「《 》《よーし》うまくまいたぞ おっとスプリングフィールドスタジアムだぜ」とあるところ、最終的な音声では《は~っ》《よーし》パトカーまいたぞ と思ったらスプリングフィールドスタジアムだぜ」になっています。

02:14 バートに大リーグから落ちてきた選手はいないかと尋ねられるホーマー。
台本上は「まあ色々混じってる」とあるところ、大平さんによって語尾に「けど」が書き加えられ、最終的な音声にも反映されています。
ここはホーマーの口パクにぴったり合わせるための追加と思われます。

02:45 野球のチケットを手に入れた漢ホーマーの心得とは?

台本上は「恥を捨てて最後はバカになりきる その位の意気込みがないとな」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、「恥を捨てて最後はバカになりきる その位の意気込みがなくっちゃァな」になっています。
ここ、原語版では“It also gives me the right--no, the duty--to make a complete ass of myself.(直訳:権利がある、いや義務だ。自分自身を完全なバカにする義務。)”なんですが、翻訳家の徐さんのセンスにより、オリジナルを尊重しつつもより日本語表現的なおバカな説教をするセリフになり、さらに最終仕上げで大平さんが語尾をホーマーらしいどこか憎めない可愛げのあるものにされています。
最高の翻訳に最高の出演者の組み合わせは、とにかく最強です!

03:13 バーンズ社長からシンプ君と呼ばれたホーマー。

台本上は「あーいえシンプソンです社長」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、「あーいえあのシンプソンです社長」に。
言うに言えないオドオド感を込めた追加ですね。

03:59 フラッシュにマージが見ていることを伝えるチームメイト(選手1)
台本上は「オイフラッシュ いい女がこっちへくるぜ見てみろ」とあるところ、最終的な音声では、「オイフラッシュ いい女がこっちジーッと見てるぜホラになっています。

04:41 マージに指摘され社会の窓を閉じたホーマー。

台本上は「どーもすみません」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、「どーもすん」に。
大平さんがたまに投入される関西風なセリフです。

04:55 おだてるスミサーズに対して、昔の自慢話を始めるバーンズ社長。
台本上は「《 》まぁそういうとこか…これでも昔私の消えるような球は今は亡きあのサッチェル・ページのトラベルボールとよく比較されたよ」とあるところ、最終的な音声では《ヘッ》まぁそういうとこ…これでも昔はな私の消えるような球は今は亡きあのサッチェル・ページのトラブルボールとよく比較されたもんだよ」に、
それに続く、バーンズ「スミサーズ つばをくれ」→スミサーズ「はい只今差し上げます」は、バーンズ「スミサーズ つばつけて」→スミサーズ「はい只今おつけします」に変更されています。
バーンズ社長らしい口調に、さらに現場で絵の状況から判断してより自然なセリフにアレンジされたようです。

05:20 始球式ヤジるホーマー。

台本上は「バーンズのフニャ腕ェ!(原語版では“rag arm=ぼろ腕”)」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、「バーンズのフニャ腕ェ!」に。
語感が楽しい!

06:41 国家を大大大熱唱しているマーフィの歌唱が終了して…

07:00 渋々社員と野球観戦をするバーンズ社長。
台本上は「せめて囲まれないよう通路側の席にしてくれ」とあるところ、最終的な音声では「せめて囲まれないように通路側の席にしてくれに。
バーンズの北村さんも1字単位の微調整のこだわりです。

07:47 バーンズ社長からビールを飲みたいかと問われるホーマー。
台本上は「あー私ですかいえまさか あんなもの飲むのは下等な人間だけ」とあるところ、最終的な音声では大平さんのアドリブで語尾に「でございます」が追加されています。
バーンズのセリフが始まるギリギリまでセリフを詰め込んで、よりセリフのテンポもすごいことに。

08:11 バーンズもヤジる。

原語版では“The hitter's off his rocker, kissing betty crocker!(直訳:バッターイカれている ベティクロッカー(※)にキスしてる)”とあるところ、良き時代のテレビ吹き替えならではの日本人に優しいアレンジで、「シナトラ真っ青 連続ヒットでヒットパレードに。
特にバーンズのセリフは、日本人的に馴染みのないワードが多く登場するので、WOWOW時代はこのようにアレンジされることも多かったのです。
(※ベティクロッカー…アメリカの製粉メーカー:ジェネラルミルズ社のブランド。クッキーやケーキでお馴染み)

08:21 さらにホーマーもヤジる。

原語版では“Little baby batter, can't control his bladder!(直訳:赤ちゃんバッター 膀胱をコントロールできない)”とあるところ、吹き替え版では「タマなしバッター タマ打てないバッター」に。
翻訳家の徐さんの吹き替え翻訳を絶賛されていた大平さんは、中でもこういうちょっとお下品なセリフ選びのセンスを特に絶賛されていました!

08:41 意気投合して大盛り上がりの2人。

08:54 選手の体たらくにご立腹のバーンズ社長。
台本上は「けしからん!役立たずにグローブをはめる資格はない」とあるところ、最終的な音声では「けしからん!役立たずにグローブをはめる資格なんかない」に。

09:54 アイソトープスの勝利に実況者(島田敏さん)も大興奮!
原語版では“The Isotopes win a game!(アイソトープス勝ちました)”を繰り返していますが、吹き替え版では最後のそのセリフが、台本上は「アイストープス勝ちました」とあるところ、最終的な音声ではアイソトープサヨナラ勝ちです!!」に。
熱量がとにかくすごい!!

10:13 ファンに囲まれるホーマー。
台本上は「《 》どうもどうも いやーてれるなあ 皆さんに喜んでもらえて嬉しいけど打ったのはバッターだからね」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、「《ヘヘ》どうもどうも いやーてれちゃうなあ 皆さんに喜んでもらえて嬉しいけど打ったのはバッターなんだからに。

10:45 オットーからダンシング・ホーマーと呼ばれて…

台本上は「うるさい!」とあるところ、台本記事で何回もご紹介しているとおり、大平さんの“愛すべきホーマー”のキャラ作りの一環で、「うるヘェ(んだ)!」に。

11:56 ピアノ奏者にリクエストを出す、ダンシング・ホーマー。
台本上は「今日はカリブの気分だ 小象の行進をレゲエのビートで頼むよ」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、「今日はカリブの気分だ イッチョー小象の行進をレゲエのビートで頼むよ」に。
ホーマーの口パクに合わせるために、大平さんが追加されたものだと思われます。

13:53 友達と分かれたくないバートに対してホーマーは…。
台本上は「《 》もっといい友達ができる」とあるところ、大平さんによって手が加えられ《ブー》もっといい友達ができるに。
たった1字の追加ですが、この微調整でよりセリフが柔らかい印象になっていますね。

15:04 同級生に別れを告げるリサ。

画面欄にあるように、原語版からセリフが少し変えられています。
原語版では“I can't help but feel that if we had gotten to know each other better, my leaving would actually have meant something.(直訳:もし私たちがもっとお互いを知っていれば、私の旅立ちにも意味があったのではないかと思えてならない。)”とあるところ、吹き替え版では「私たちもっと親しかったならこの別れも違った意味をもっていたかもね」になっています。
他のファミリーには別れを惜しむ人がいる中、リサには…というジョークのシーンなのですが、原語版のままだとちょっと悲壮感漂うものになってしまうと考えられたからか、吹き替え版ではやけに大人びたことを言う面白さのセリフにアレンジされたのだと推測します。
オリジナルから大幅に意味は大幅には変わっていませんが、このような調整からも、本当に気を遣って制作されていたことが分かります。

15:32 観客にお別れの挨拶をするホーマー。
ないない尽くしのホーマー、セリフが韻を踏んでるのも素晴らしいです!

16:09 スタジアムを後にするホーマー。
落下して“D'oh!”と叫ぶホーマーですが、ここのシーンの吹き替え版では、こちらも大平さんのホーマーで定番の、力強い「アラーッ」になっています。

19:10 グーフボールからどんな芸を披露するか問われるホーマー。

台本上は「えー…町のスペルを“小象の行進”の曲で表そうかと」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、語尾に「思ってるんですが」が追加されています。

19:48 選手の元奥さんたちの愚痴。

黒髪の元奥さんの吹き替えは、バート役の堀さんが兼役で務められています。アイカランバ!

20:15 すっかりリラックスして飲み食いしているホーマー。

焦って飛び出すシーン、原語版では“Uh-oh!”のみですが、吹き替え版では台本の書き込みにも一部あるように、「アワワ…いけね!!」と大平さんの躍動感あるアドリブでアテられています。

21:32 プレイバックは終了し、コスチュームの行方は…。

台本上はオリジナルのまま「コスチュームは埋めたよ」になっていますが、吹き替え版では「埋めたよ」の部分が大平さんによって「捨てたよ」に変更されています。

21:48 昔話のおかわりを要求されるホーマー。

「いいけど何でみんな…」の前に、大平さんによって「そりゃ」が書き加えられ、最終的な音声にも反映されています。
情けなさと、温かいみんなが周りにいて話をちゃんと聞いてくれる嬉しさが混在した、複雑な感情のホーマーを絶妙に表現されるここのセリフは、必聴です!!
その後のモーの優しい声もイイネ!

おまけ:本エピソードのWOWOW時代のエンディングは、いつものテーマ曲ではなく、劇中で使用されたトニー・ベネット氏の歌声が使用される、特別仕様でした。