シンプソンズ・ファンクラブ・ブログ

「ザ・シンプソンズ」を日本で広めるために日本語吹替版のエピソードガイド、グッズを買えるお店の紹介、大平透さん使用のアフレコ台本の研究、等々を掲載しています。

大平さんのシンプソンズ台本:シーズン2、第13話「良心の呵責"Homer vs. Lisa and the 8th Commandment"」

シーズン2、第13話「良心の呵責"Homer vs. Lisa and the 8th Commandment"」January 24, 1991

(日本初回放送:1993年1月9日、録音日:1992年12月3日)
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原題の“8th commandment”は本編でも触れられているとおり、モーゼの十戒の第8戒「盗んではならない」から。
邦題ではそれをちょっとひねって、盗みに対するリサの思いを表したものになっています。


<以下、ネタバレになります>


【画面】(台本上の通信欄)

・01:24 字幕「シナイ山 紀元前1220」

・02:42 字幕「スプリングフィールド 現在」

・06:06 教会
状況説明。

・07:15 字幕「盗むな」

・10:53 字幕「汚染除去 シャワー 全部洗え」

・12:37 名前 サンジェイと言ってますが弟か兄か分からない 後から出てくると困るのでこうしました

アープーが店番を任せる人物が、吹き替え版では上記理由から名前は出さすに「身内(原音:my brother Sanjay)」になっています。
これは、この時点では詳細設定(アープ―の弟であること)が不明瞭であったため。
外画作品で、兄か弟かイチかバチかで訳した結果ハズしてしまい、後シーズンで急に設定が変わってしまうのは意外とあるあるなんですよね。

・15:03 ケーブルはアクマ的な存在になりつつある 表現としてかたいので変更

マージのセリフを日本語的表現にアレンジしたという報告。

・17:45 二人《ガヤ》 「このヤロー ふざけやがって チクショー」

リサのセリフに重なるテレビ音声のボクサーたちのセリフはこちらの欄に。


【音声】

・02:40 十戒が発表された後、ホーマーに声をかけるカール(ヘズロン)
台本上は「気の毒に」とあるところ、最終的な音声では気の毒に」になっています。
カールの口パクに合わせるための追加と思われますが、ホーマーの旧友カールならではのちょっと温かみのあるセリフになっているように思えます。

・03:55 ケーブルがついた喜びをかみしめるホーマー
台本上は「ケーブル・・・思ってたよりはるかにすばらしい」とあるところ、最終的な音声では語尾に「よ」が追加されています。
ホーマーの口パクに合わせるための追加です。

・04:07 ケーブルのお笑い番組を観るホーマー
台本上は「アレは本当に困るよなー」とあるところ、最終的な音声では「アレ_本当に困っちゃうよなー」に。
細部までこだわられ、ホーマーらしさがより表現されていますね!

・04:20 家族にケーブル導入を発表するホーマー

台本上は「本当だよ全部で68チャンネル~毎日千六百時間の番組が・・・見られるんだよ」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、「本当だよ全部で68チャンネル~毎日千六百時間の番組がみ~んな見られちゃうんだよ~」になっています。
こちらでも口パクと調整をしつつ、ホーマーらしい言葉遣いを工夫されているのが分かります。

・04:54 マージを取り込もうとするホーマー

大平さんが原音(ダン・カステラネタ氏の演技)をチェックされ、それに忠実に台本の「マージ」「マージ」となるように書き込みをされています。

・04:58 ウーマンネットワーク、今日のテーマ
台本上は「今日のテーマは“手製のバンドエイドで救急医療費を半分にカットしよう”というものです」とあるところ、最終的な音声では、「今日のテーマは“手製の絆創膏で救急医療費を半分以下にカットしよう”というものです」になっています。
商標部分を変えたり、細かな部分までこだわりが見られます。

・05:11 メキシコプロレス
台本上は(メキシカン)との表記のみであることから、原語版同様にポルトガル語をそのまま使用することが予定されていたようですが、最終的な音声では「さぁいよいよメキシコミドル級のベルトを懸けたタイトルマッチのゴングです」と日本語に吹き替えられています。

・05:41 見るものがないのにテレビを見続けるホーマー

台本上は「何でも流しや見ると思ってるね」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、「何でも流しや見ると思ってるんだになっています。
口パクに合わせながら、ホーマーの卑屈な感じがより出ていますね。

・05:52 テレビから流れる西部劇の音声

台本上は、デイビー「パパの車を使えばすぐいけるよ(原音:We'd get there quicker if I drove my Dad's car.)」→少年「やばいんじゃないか(原音:I don't know, Davey)」とあるところ、現場で西部劇の音声にアレンジされたようで、最終的な音声では「三歩進んだら抜く、いいな?」→「あぁ、分かった」になっています。
オリジナル版及び台本にあるセリフは、60年代に愛や友情そして宗教ネタでヒットしたアメリカのクレイアニメ「Davey And Goliath」のパロディなのですが、日本では未放送のため、クラシックネタ繋がりということからか、シンプソンズの初代吹き替えディレクターの春日正伸氏も数多く手がけられた西部劇ネタになったようです。
こういうアレンジができるのも、良き時代の“テレビ吹き替え”ならではで、視聴者としても楽しいですね!
ちなみに、「Davey And Goliath」ネタは以下のエピソードにも。
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・06:07 ラブジョイ牧師、今日のお説教

台本上は「今の信徒は神が必要とは思っていません レコードプレーヤーを作ったのも~人間と思っているのです」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「今の信徒は神が必要とは思っていません レコードプレーヤーを作ったのも~全て人間と思っているのです」になっています。
セリフをすべて読んで、なにがより適切なのか、ということを演出家目線で見られるのが大平さんなのです。

・07:44 帰宅後すぐテレビを見るバート
台本上は「有料チャンネルを見ようか」とあるところ、最終的な音声ではさ~て、有料チャンネルを見ようかな~っになっています。
動きがある悪ガキ感たっぷりの表現は、やはり堀さんの凄さがよく出ていますね。

・07:53 以降お馴染みとなるトロイ・マクルアー、そしてみんな大好きなあの自己紹介が初登場!

今回紹介される出演作は、“Cry Yuma”→『そうですユマ!』、“Here Comes the Coast Guard”→『沿岸警備が帰って来た』
なお、台本上は「今日は トロイ・マクルアーです “そうですユマ!”や“沿岸警備が帰って来た”に出ていたトロイです」とあるところ、最終的な音声では、「今日は トロイ・マクルアーです “そうですユマ!”や“沿岸警備が帰って来た”に出ていたあのトロイです」になっており、初回からあの自己紹介が完璧な状態で視聴者に届けられていました。

・08:06 もう広告番組も楽しみにしちゃっているホーマー
台本上は「あー出たよ広告番組が(原音:Oh, goody, a program-length advertisement.)」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、オウヤット出たよ広告番組が」になっています。
口パク調整をしながら、ちょっとわくわくしている感を出せるよう、アレンジされたものと思われます。

・08:57 悪魔を見てしまったリサに声をかけるバート

原語版では“Beats the hell out of me.(直訳:自分をボコボコにしな)”なのですが、翻訳家の徐賀世子の手にかかると、これが「リサ地獄(へ)行ってこい」になるわけです。
悪ガキバートを存分に表現された翻訳ですね!
また、その発言によりホーマーに怒られたバートですが、怒られたリアクションのセリフは台本上は《 》のみで、演者さんに委ねられていたわけですが、現場で堀さんによってホーマーよろしく「ドッ!」が当てはめられました。(原語版では“Ah!”

・10:09 リサから盗みについて問い詰められるホーマー

台本上は「あーこう考えたら?今日朝食たべた時リサは金を払った?」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、「あー・・・こう考えたら?今日朝食たべた時リサは金払ったかい?」になっています。
次に登場するセリフとの整合性をとりつつ、動揺しながらリサに説明するテンポ感を絶妙に仕上げられています。

・10:55 試合のお誘いをするカール
台本上は「俺ン家来るか?ラジオの試合中継で一杯やって」とあるところ、最終的な音声では語尾に「さ」が追加されています。
口パクにピッタリ!

・11:06 ホーマーからのお誘い

台本上は「あーそれもいいけどこういうのはどうかなー家に来てケーブルテレビで全試合ナマで見るってのは!?」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、「あーそれもいいけどこういうのはどうかなーみんなで家に来てケーブルテレビで全試合ナマで見るってのは!?」になっています。
仲間たちの存在を明確して、より分かりやすい表現を大平さんが演出されています。

・11:51 なぜ庶民の家庭にテレビを見に行くのか問われたバーンズ

台本上は「スミサーズ 大きな試合こそ私が大勢と見たい唯一のもの~」とあるところ、最終的な音声では、語尾に「だ」が追加されています。
また、それを受けてのスミサーズのセリフも「社長もやはり庶民的です」とあるところ、「社長もやはり庶民的なんですになっています。
この2人の吹き替え版での会話の世界観も完成しきっていますね。

・12:07 飲み仲間もご招待するホーマー
台本上は「ああやるよ 8時から家で みんな来てくれ」とあるところ、最終的な音声では語尾に「よ」が追加されています。
口パク調整しながら、より自然な話し言葉に。

・12:27 アープーも誘うホーマー

台本上は「ああ金曜の夜 あんたも来る?」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、「ああ金曜の夜 あんたも来るかい?」になっています。
こちらもタイミングがぴったりに!

・13:39 アダルト番組にくぎ付けのバート

これから放送される番組は原語版では“Stardust Mammaries”(台本でもオリジナルに忠実に「星くずの乳房」)になっていますが、最終的な音声では「愛と肉欲の日々」になっています。
WOWOWさん時代の配慮で、ちょっとマイルドにされた印象を受けます。

・13:55 アダルト番組について説明するホーマー
台本上は「バート アレは子供の見るもんじゃない 見ていいのは愛しあってるパパやママ達だけだ」とあるところ、最終的な音声では、「バート アレは子供の見るもんじゃない 見ていいのは愛しあってるパパやママ達だけだになっています。
大平さんの優しさの表現がセリフからあふれています。

・14:19 リサも“ダークサイド”へ誘うホーマー

台本上は「おいリサ ベルモントのレースだよ」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、「おいリサ ベルモントのレースだよ 見ないの(か)?になっています。
口パクに合わせるため、適切なセリフと当てはめられています。

・14:27 寝室でリサについて話すホーマー

台本上は「何でああなんだろうなー~もう少しバートみたいに…バートは困るけどもう少し極たん(印刷上の都合で途中で切れている?)」とあるところ、大平さんによって手が加えられウーン何でああなんだろうなー~もう少しバートみたいに…いやバートは極端すぎて困るけ(れ)ど・・・になっています。
苦悩の表現も職人技です!

・13:37 工事業者に声をかけるホーマー
台本上は「あ?どうやって入った?」とあるところ、最終的な音声では「あ?どうやって入ったんだよ?」に。
こちらも口パクにぴったりです!

・16:03 急に防犯意識が向上するホーマー

台本上は「用心しすぎるって事はない(この部分おそらく印刷上の都合で欠落しています)泥棒じゃない本格的な空き巣だ」とあるところ、
大平さんによって手が加えられ、「用心しすぎるって事はないんだよ 泥棒はいくらでもいるんだから コソ泥じゃない本格的な空き巣だ」になっています。
メモ書きからも分かるように、最終的には大平さんによって削除されていますが、アドリブで「ココロのスキマ埋めなくちゃ」というセリフも用意されていたようで、このバージョンでも聴いてみたかったものです!
なお、大平さんは本エピソードと同時期に笑ゥせぇるすまんも収録されており、工事業者とホーマーの関係に、喪黒福造とお客のキャラ設定を重ねてアドリブのセリフを練られていたように思えます。

・16:35 現行犯をおさえるホーマー
台本上は「お前達何やってるンだ!逃げるな!戻ってこい!お前は知ってるぞ!逃げるんじゃない…バート!このケーブルは見ないと約束しただろう!部屋へ行ってろ!」とあるところ、最終的な音声では、「お前達何やってるンだ!逃げるな!戻ってこい!あ、お前_知ってるぞ!逃げるんじゃない…コラ!バート!このケーブルは見ないと約束しただろう!部屋へ行ってろ!」になっています。
ちょっとしたアレンジですが、躍動感がここまで出るのは大平さんならでは!

・17:09 アープーの差し入れに対してホーマーは…

台本上は「ちょうだいしたの(原音:Ooh, did you swipe those from work?)」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、「チョロマカしたのか?」になっています。
この「ちょろまかす」という表現、以降ちょくちょく登場するようになりますが、まさか大平さんのアイディアだったとは!

・18:38 庭から部屋の中を見つめるリサにホーマーは…

台本上は「頼むからそんな目で見るな!」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、「頼むからそんな目で見るな!」になっています。
こちらも口パク調整のためですが、「よ」というたった1字分の追加でも、ダメ親父なんだけどどこか憎めないホーマーというキャラクターをここまで表現できるという、大平さんの凄さを改めて感じます。

・19:14 天下の宝刀!言い訳炸裂ホーマー

大平さんのメモ書きに「泣」が!
オリジナル版のダン・カステラネタ氏のお芝居をここまで忠実かつパワフルに日本語化できるのは、やはり大平さんだけ!
ここ、ちょっとザ・シンプソンズ MOVIE」の冒頭っぽい?

(↓アマゾンの配信の吹き替え版は、大平さん達TVキャストバージョンです!)

・20:31 シンプソン家の女性陣に話しに来たホーマー

台本上は「今重大な決心を二つしたからそれを聞いてほしい」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、「今重大なを二つするからそれを聞いてほしい」に。
また、その後の「ふたつ目」の話の部分については台本上に記載がなく、現場で2案のセリフモーゼの十戒を守るんだ or.お前達がにくたらしい)が提示されたようですが、最終的には原語版(I'm not very fond of any of you.)に忠実な「お前達がにくたらしい」が採用されました。

・21:42 ケーブルを切りに向かうホーマーをどうにかして止めたいバート
台本上は「親父考え直してよ みんな見られなくなる」とあるところ、最終的な音声では「親父考え直してよ 面白いの見られなくなっちゃうじゃん ねぇ~ったら~になっています。
堀さんの甘える悪ガキボイス、最強です。

・21:50~のホーマーの息遣い等は、すべて大平さんのアドリブ。

“大平さんホーマー”らしい独特のリズム感は癖になります。

・今回のワンポイント:欧州版キンダーサプライズ・シンプソンズ TV(2000年製)