シンプソンズ・ファンクラブ・ブログ

「ザ・シンプソンズ」を日本で広めるために日本語吹替版のエピソードガイド、グッズを買えるお店の紹介、大平透さん使用のアフレコ台本の研究、等々を掲載しています。

大平さんのシンプソンズ台本:シーズン2、第4話「バーンズ知事選に出馬!!"Two Cars in Every Garage and Three Eyes on Every Fish"」

シーズン2、第4話「バーンズ知事選に出馬!!"Two Cars in Every Garage and Three Eyes on Every Fish"」November 1, 1990
(日本初回放送:1992年11月7日、録音日:1992年10月15日)

本エピソードは本国ではシーズン2の第4話として放送されたものですが、日本では(シーズン1と2は切れ目なく放送されたため、明確にここからがシーズン2と宣伝されて放送されたわけではないものの)シーズン2の第1話として放送されました。
これをシーズン2のトップに持ってくるWOWOWさんのセンス、さすがです!

ちなみに、台本の表紙から分かるように、当初は邦題の最後に「!!」がついていなかったようです。
simpsons333.hatenablog.com


<以下、ネタバレになります>


【画面】(台本上の通信欄)

02:26 字幕「池で突然変異の魚つかまる」「放射能の池?」「知事調査にのりだす」

03:42 測量計オン
測量計の機械音のSEを入れるための指示

08:22 字幕「バーンズ知事選へ」

13:07 みじかくて字幕に入らないのでアナウンサーにいわせました

新聞の見出しの出る時間が短く、字幕対応ができないための吹き替えならではの対応。

13:27 字幕「ベイリー知事」「バーンズ知事」

13:57 字幕「バーンズ ベイリーに迫る」

19:18 バーンズ「私はこのような政府は許さない」
マージとリサのセリフに重なることから、バーンズのセリフ(オフ)は画面欄に記載されています。

・19:30 バーンズ「今のままでは何も改善されない 労働者が苦しむ構造は変わらないのです!」

20:13 バーンズはき出す


【音声】

02:00 バートに誰か尋ねられる記者デイブ。
台本上は、「デイブシャットン 神出鬼没なリポーターだよ」とあるところ、最終的な音声では「デイブシャットン 神出鬼没な社会派リポーターだよ」になっています。
自称しちゃうことでより滑稽な感じが出ますね。
なお、ここからのシーンの一部は、シーズン2DVDコレクターズBOXの各国の吹き替え音声が観られる映像特典に使用されていましたね。

02:45 ベイリー知事をディスるホーマー。

台本上のセリフ「メリー・ベイリーか 俺が知事ならもっと建設的な事をやるけどね」の前に、大平さんによって「ヘッ」と書き込みがされており、最終的な音声にも反映されています。
ホーマーのバカにしている感じが、この息遣いでより伝わってきますね。
また、「建設的な事をやるけどね」「を」が削られ、話し言葉としてよりテンポよく変更になり、語尾の「ね」「な」に変更もされています。

02:50 マージから建設的なこととはなにかと問われるホーマー。

台本上は「たとえば歴代の大統領の誕生日を全部祝日にしちゃって、国民に休んでもらうとかナーニが大統領の日だ そりゃないよ 俺が朝から晩まで汗水たらして…」とあるところ、大平さんによって台本上に書き込みされた上、「たとえば歴代大統領の誕生日を全部祝日にして、国民に休んでもらうとかアーだめだめ(だめ)そりゃないな やっぱりダメ!朝から晩まで休みなしだもの…に変更されています。
ホーマーが、自分で言ってからよくよく考えてやっぱりダメだと考え直すシーンですが、より彼の心情が視聴者に伝わるよう、大平さんの演出によりセリフの変更が行われたようです。

03:06 出かける前に子供達からごちゃごちゃ言われるホーマー。

セリフの尺の都合かと思われますが、バートの「ミュータントフィッシュ作りに精出してよ」が最終的な音声では「ミュータントまた作ってね」に、それに対するホーマーの「お前をミュータントにしちまうぞ」が、「ウルヘエんだよ」に変更されています。
前にも紹介しましたが、大平さんホーマーの「ウルヘエんだよ」は、「うるせえんだよ」だとちょっと乱暴で愛のない感じのセリフになってしまうところを、家族を愛している温かくも情けない親父感が非常によく出ているセリフで、大平さんのセンスが輝いているワードだと思います。

03:12 残り物ドーナツを見たホーマー。
台本上、「あークソ~ プレーンドーナツだけか 良いのばっかり先に食っちまって有難うよ!」とあるところ、大平さんによって「良い」「ウマい」に書き換えられ、最終的な音声にも反映されています。

05:59 歌うバーンズ

ビング・クロスビー「Buddy , Can you spare a dime?」をベロベロで口ずさむバーンズ社長。

06:37 すったもんだで残業してたホーマーからマージへのお願い。

台本上は、「ああ今から帰るから飯頼む」が大平さんによって書き換えられ、「ああ今から帰るから飯頼んだよに。
マージに対する言葉遣いが優しい印象になっていますね。
ちなみに、ここのシーン、原語版では“There 12-hour days are killing me.(直訳:12時間労働はつらいよ)”であることから、上記のセリフは日本版オリジナルの演出のものであることが分かります。

07:53 ホーマーの一人喋り。

台本のセリフは一切変えずに、喋りのペースとリズム、強弱を調整しながら絵にぴったりと声をアテていく、大平さんの職人技の記録が台本上にも現れています。

08:31 すっかりバーンズ派になったホーマー。
台本上は「俺はバーンズで行く」となっているところ、大平さんによって語尾に「もん」が書き加えられ、最終的な音声にも反映されています。
たった2文字の追加ですが、ホーマーらしいこんなにもほんわかした感じが出せるのは、やはり大平さんだから成せる業ですね。

09:19 選挙戦略が気になるバーンズ社長。
台本上は「しかしイメージだけではベイリーを押さえこむ事はできないだろう?」とあるところ、最終的な音声では画面上のバーンズの口の動きに合わせるためか、語尾の「…だろう?」「…んじゃないかね?」に変更されています。
こういう調整でも、セリフの細部までバーンズらしさがよく出ているチョイスになっていますよね。さすが、大平さんが当たり役と絶賛されていたバーンズ社長役の北村さん!
(その大平さんのホーマーも最上級に当たり役なんですけどね!)

09:25 バーンズに次々に紹介されている選挙戦のプロたち。
“character assassin(=ライバル候補者の悪評を広める人)”「毒舌クリエーター」と訳す、翻訳家の徐賀世子さんのセンスが輝きまくりです!

12:15 バーンズ候補のテーマ曲

♪「正義の男に一票を モ~ン~ゴメリーバーンズ」♪
(原語版:♪Only a moron wouldn't cast his vote for Mon-teee Burns!♪ )

15:13 子供達に2階に上がるよう命令するホーマー。

台本上は「上に行ってろ 子供の見るもんじゃない」になっているところ、より対象者を明確にさせるセリフにするよう、大平さんによってセリフの先頭に「二人とも」が書き加えられ、最終的な音声にも反映されています。

16:36 ひらめいたマージにホーマーは…
原音では“Huh?”、台本上は《 》のみで、ここにどんな息遣いを入れるかは大平さんに委ねられていたようですが、大平さんは台本には「アラッ」と書き込まれているものの、最終的な音声では「あのね」に。
こういう大平さんならではの独特なリズムの言葉のチョイス、痺れます。

17:31 ヘルパーに飛びつかれるバーンズ社長。
台本上は「犬は好きだから 子供もね」とあるところ、最終的な音声では「犬は大好きだ 子供もね」に変更になっています。

18:09 バートの屁理屈に対するバーンズ社長の切り返し。

原語版では“Only an innocent child could get away with such blasphemy.(直訳:こんな冒涜的なことをするのは、無邪気な子供だから)”となっている部分が徐賀世子さんのセンスにより、「子供の悪ふざけ位神様を笑って許しますよ」というより穏便な表現に意訳されています。
お祈りシーンにぴったりなセリフで、日本の視聴者にもしっくりくるお見事なセリフになっていますね。

20:24 床に落ちた魚をみたディーンのひとこと。
台本上は、原語版に忠実に「床に落ちた瞬間すべてがおわった…」になっていますが、最終的な音声では「床に落ちた瞬間」の部分が「これで」に変更されています。

20:30 キャスターのスコットが伝えるバーンズニュース。
台本上は「最新の調査によるとバーンズ人気は魚事件で底まで下落しました」が、最終的な音声では「最新の調査によるとバーンズ人気は魚事件で奈落の底まで下落しました」に。
魚の身が床に落ちたことにかけて、より“落ちた”が強調されているように感じます。

21:01 バーンズからテーブルをひっくり返すよう命令されたスミサーズ。

原語版では、お馴染みの“Yes, sir.”、台本上も「イエッサー」になっていますが、最終的な音声では「分かりました」になっています。
以降、シリーズ通して、吹き替え版でのスミサーズの返事はイエッサーではなく日本語に翻訳されることになります。

21:57 マージに甘えるホーマー。
台本上「マージどうにかしてくれ 安心させてくれ お前だったらできるだろう」とあるところ、「お前だったらできるだろう」の部分が、大平さんによって「たのむよ」に書き換えられ、最終的な音声にも反映されています。
ここも時間的な問題かと推測しますが、やっぱり大平さんホーマーの甘えた「たのむよ」はいいですね~。

22:14 ホーマーとマージのキスシーン

《キス》 ウンマ(←大平さんによるメモ!)


おまけ(今回のワンポイント)

NYCC Exclusive Nigiri Blinky Vinyl Figure(Kidrobot社製)
Kidrobotのスーパーハイセンスグッズ!
握り寿司とブリンキーを組み合わせた、最高にぶっ飛んだフィギュアです。
パッケージの右側面には、本エピソードの冒頭の釣りシーンが日本画風(台本表紙写真にあるもの)に描かれています。