シーズン2、第7話「感謝祭の出来事"Bart vs. Thanksgiving"」November 22, 1990(日本初回放送:1992年11月28日、録音日:1992年11月12日)
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台本の表紙のシンプソン一家が、大平さんによって黄色に塗られています!
全力で魂を込めながらも、楽しんで収録に臨まれていたのがこういうところからも伝わってきますね。
なお、本エピソードの日本初放送日は、アメリカの感謝祭である11月の第4木曜日(1992年の場合は11月26日)の直後、1992年11月28日でした。
<以下、ネタバレになります>
【画面】(台本上の通信欄)
・02:18 ☆ビル、マーティ 以前にも登場
統一されたスタッフによるチームで一丸となって作っているから、こういうところにも気づけるわけです。
・05:23 ホーマーはパティとセルマを間違えています わざと間違えているのか?
原語版から狙って間違えているシーンであり、台本上の記載ミスでないことの注釈。
・05:37 ガラ声で
ホーマーのセルマとパティの口真似シーンの指示。
・06:15 字幕「老人ホーム」
・06:17 字幕「外の世界の事は話さないようお願いします」
・13:51 字幕「血を買います 特別サービス12ドル」
・15:19 以前にも登場しました(←ケント・ブロックマン)
初期エピソードならではの注釈。
・17:26 以前登場 #4“ホーマーの大決心”(エディ ルー)
ビルとマーティのシーン同様、スタッフがちゃんとこのあたりを押さえてるから、吹き替えにありがちな準レギュキャラが回によって声が違う問題が起きないわけですね。
【音声】
・01:09 カウチギャグのエイブじいちゃん
台本にはセリフの記載がありませんが、現場でエイブじいちゃんの滝口順平さんの声で、しっかり「あ~なんだなんだ、なにがあったんだ!?」とアテられています。
・01:51 ノリが原因でケンカする子供たちを叱るホーマー
台本上は「二人ともやめなさい!今日は感謝祭なんだ 仲良くノリを使えないならパパが取り上げちゃうぞ そしたらどちらも使えなくて困るだろう」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、「二人ともやめなさい!今日は感謝祭なんだ 仲良くノリを使えないなら_取り上げちゃうぞ そしたら二人とも困るだろう」になっています。
時間調整のためにセリフを削っているものですが、適切なワードの当てはめにより自然なセリフに仕上がっていますよね。
・02:42 突如登場するアニメネタ
バートにホーマーが熱弁するシーン、台本上は「こりゃ伝統ってもんだ~まるで茶番劇だろ」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「こりゃ伝統ってもんだ~まるで茶番劇だろが」に。
ホーマーの口パクに合わせるため、語尾に1字「が」が追加され、時間ぴったりに。こういう細かいところも、匠の技です!
・03:01 リサの部屋に入ってくるマギー
台本上は「マギー 感謝祭のためのテーブルの飾り」とあるところ、最終的な音声では「マギー 感謝祭のためのテーブルの飾りよ」に。
こちらも、上のホーマーのセリフ同様の口パクに合わせるための追加ですね。
・04:02 料理の邪魔をしまくるバート
堀絢子さんの「ママ壊れてる~♪」、バートの魅力を存分に表現されています!
・04:32 マギーとアメフトを観るホーマー
台本上は「5点半以下で負けてくれると臨時収入が入るんだけど」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「5点半以下で負けてくれると臨時収入が入るんだけどネ」に。
こちらも、1字の追加でぴったりに!
・04:36 アメフトの実況
台本と最終的な音声を比較すると、「おっと!」や「はっ」といった、セリフやブレスの指示がないところにも声が入れられていて、よりリアリティあるスポーツ中継の音声に仕上がっています。
・05:37 セルマとパティの口真似をするホーマー
原語版に忠実に、声にならないガラ声で、「見えすいているのよ」「よくあんなのとね」を真似しています。
ちなみに、パティの「よくあんなのとね」は、台本上は「よくあんなのががまんできるわね」となっているのですが、時間的に収まりきらないため現場で短いセリフに変更されたようです。
・05:52 ラジオでアメフトのハーフタイムショーを聴くホーマー
台本上は「いいんだよなああのチーム 何てったって心がまえが良い!」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「いいんだよなああのチーム 何てったって心がまえが良いよ」に。
こちらも、お馴染み1字の追加でぴったりです!
・06:22 入居者に家族からのメッセージを伝える職員
老人ホームの職員(役名:スタッフ)、そしてこの後登場するホームレスの声は、シーズン1ではウィガム署長役をピンチヒッターで演じられていた、島香裕さん。
同時期に、WOWOWで放送されていたディズニーアニメ「パパはグーフィー」では、グーフィー役でピート役の大平透さんと共演されていました。
・06:50 ホームからじいちゃんを連れ出そうとするホーマー
原語版では“This place is depressing.”の部分、台本にはそれを訳した「気分が滅入る」と、代替案として「ここ暗いんだもん…」が記載されています。
最終的には、台本への書き込みからも分かるように代替案の方が採用されており、さらに「だってここ暗いんだもん…」になっています。
忠実な翻訳だとちょっとダークすぎると判断されたものかと思われます。
・06:53 どうにかしてじいちゃんを連れて行くホーマー
台本上は「あーでもここもそんな悪かないよ良いとこだよ さ行こう」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「あー_ここもそんな悪かないよ良いとこだよ さ行こうよ」
とにかく細部までこだわられています!
・08:48 テーブル飾りを巡ってリサと揉めるバート
台本上は「貴重なスペースとりすぎてんじゃない」とあるところ、最終的な音声では「場所とりすぎだよ」に変更されています。
時間調整のための現場での変更と思われます。
・09:30 部屋に行くようホーマーから叱られるバート
台本上は「いいよ~20分位したらパンプキンパイ持ってきて」とあるところ、最終的な音声では「いいよ~20分位したらパンプキンパイ持ってきてね」に。
こちらも1字の追加でぴったりです!
・10:10 お祈りの途中で嘆き始めるホーマー
台本上には大平さんによって「ナキ」のメモ書きがされ、最高に情けないホーマーの泣き声に!
原語版に切り替えてお聞きいただくと、カステラネタ氏の声にかなり近いことと、大平さんならではのホーマーイズムが投入されていることがよく分かるかと思います。
・10:21 リサのサックスに反応するホーマー
台本上には大平さんによって「上見る」のメモ書きが。また、その後のセリフ「心配すんな」は、「心配ないよ」に変更されています。
大平さんがVチェックをしながら、とにかくそのシーンを分析して、一番適切な言葉選びを進んで行われていたことが伝わってきます。
そりゃあ、翻訳家の徐賀世子さんの名訳やスタッフのディレクションと相まって、最強の吹き替え作品になるはずですよね!
・11:19 逆切れバート
台本上は「空腹に負けてあやまると思ったら大まちがい」とあるところ、最終的な音声では「空腹に負けてあやまると思ったら大まちがいだから」に。
大平さんのホーマーだけじゃなく、ほかのキャラももちろん、こうやってこだわられていますよ!!
・11:31 怒鳴るホーマー
バートを叱る…と見せかけてヘルパーを叱るホーマー。
大平さんの持ち役だった、テリー・サバラスの吹き替えよろしくパワフルな怒鳴り声!この声量、迫力、ほかの人は真似できません!
・12:15 スミサーズの豪華な手料理を食べるバーンズ
台本上は「いやいやもう一口も入らない 残りは捨てなさい しかしながらパンプキンパイを入れる分は残ってる」とあるところ、最終的な音声では「いやいやもう一口も入らんよ 残りは捨てなさい しかしながらパンプキンパイを入れる分は残っとる」に。
ホーマーも当たり役の大平さんが「弘ちゃん(北村弘一さん)は当たり役」と言われていましたが、バーンズの北村さんも「バーンズならこう言う!」というアレンジを自らされいたようです。まさに一流!
・14:26 バートとホーマーを勘違いするエイブじいちゃん
台本上は「自分の意志なんかないみたいに」とあるところ、最終的な音声では「自分の意志なんかないみたいにな」に。
滝口順平さん演じるじいちゃんの口パクも、この1字の追加でぴったりに!
・15:59 テレビに映るケント・ブロックマンを野次るじいちゃん
ここ、原語版では“Pompous, blow-dried college boy.(直訳:偉そうに 薄っぺらいエリートめ)”なんですが、翻訳家の徐さんの手にかかると「頭でっかちのバカエリートが引っ込め!」になっちゃうんだから、もう感動です!
メチャクチャエイブじいちゃんっぽいし、シンプソンズっぽい!!
・16:38 番号案内で大ボケをかますホーマー
台本上は「もしもしオペレーター 110番は何番だったっけ?」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「もしもしオペレーター 110番は何番だい!?」に。
ここは口パクに合わせるため、逆に短くしたパターンですね。
・17:31 ルーからバートの家出の原因を問われたホーマー
台本上は「堪えたのかもしれません」で終わっているのですが、口パクと合わせるため、大平さんがその後にセリフ「それで家出してその」を追加されています。
また、話し始めの「実は…悪さをしたんで」は、「実はその悪さをしたんで」に変更されています。
これらは、まるではじめからあったかのような自然すぎる追加セリフですよね。ベテランならではのテクニックに痺れます!
・18:53 態度が急変するホーマーたち
ホーマーのセリフ、台本上は「そうだひざまづいて涙を流して許しを乞え!」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「そうだひざまづいて涙を流して悪うございましたと許しを乞うんだ!」に。
ここもセリフの追加でぴったり収まってますし、なによりいかにもホーマーっぽい感じがよく出てますよね!
他のキャラの声色にも注目!リサの神代さんによるマギーはレア!
・20:09以降のバートとリサの掛け合い、堀さんと神代さんご両人の名演で、元々良いシーンがさらに良いシーンになっています!必聴!!
・21:49 屋根の上の2人を見ていたホーマー
「親がいいから子供もいいよ」の温かみは、ちょっとやそっとじゃ出せない、まさに大平さんだからこそできる表現かと思います。こちらも必聴!!
ちなみに、ここのセリフは原語版では“You know , Marge, we're great parents.(直訳:あのさマージ、俺たちは良い親だよ)”で、子供達には触れられていないのですが、吹き替え版では上記のようにセリフ内にも「子供」というワードが追加されています。
セリフの趣旨は変えずに、素敵な日本的な表現にアレンジされている翻訳家の徐さんのテクニックにも脱帽です!!