シンプソンズ・ファンクラブ・ブログ

「ザ・シンプソンズ」を日本で広めるために日本語吹替版のエピソードガイド、グッズを買えるお店の紹介、大平透さん使用のアフレコ台本の研究、等々を掲載しています。

大平さんのシンプソンズ台本:シーズン2、第8話「命知らずのバート"Bart the Daredevil"」

シーズン2、第8話「命知らずのバート"Bart the Daredevil"」December 6, 1990(日本初回放送:1992年11月22日、録音日:1992年10月29日)

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<以下、ネタバレになります>


【画面】(台本上の通信欄)

05:49 フランダースにはロッドとトッドの兄弟がいるようです

初期シーズンならではの注釈

13:36 スプリングフィールド峡谷

状況説明

20:51 ホーマー ヘリで運ばれる
状況説明

21:15 病院
状況説明


【音声】

01:15 プロレスの試合をモーの店で観ているホーマー

台本上はラスプーチンはリーチがあるけど…これは今世紀最大のマッチになるよ」とあるところ、大平さんによって手が加えられラスプーチンはリーチがあるけど…これは今世紀最大に試合になるぞおいに。
“生きる日本語”にこだわられていた大平さんによる横文字の日本語化と、ホーマーの口パクに合わせるためにセリフが追加されています。

02:06 客と一緒に試合を観ているモー
台本上は「あーくさい芝居して自分の筋肉にキスしてるよ」とあるところ、最終的な音声では「あーいいかと思っちゃって自分の筋肉にキスしてるよ」になっています。

02:23 ミルハウスの定位置を奪うバート

台本上はバツ席だったの」とあるところ、最終的な音声では「さっきまではねぇ」になっています。
大平さんの台本に赤で代替セリフの書き込みがあることから、大平さんがアイディアを出されたものと予想します。
自分のキャラのみならず、他のキャラのセリフにまで気を配り、番組がさらに良いものになるよう、常に全力で臨まれていたのが伝わってきますね。

03:14 シンプソン家の男性陣が釘付けになるトラックザウルスのCM

台本上は原語版のまま「トラッカーザウルス(Truckasaurus)」になっているのですが、大平さんによって手が加えられ「トラックザウルス」に。以降のセリフもすべて「トラックザウルス」に統一されています。
日本人的な感覚として耳で聞いてすぐにトラック+恐竜の名前と認識できるよう、現場で変更されたようです。
こういうところからも細部まで本当にこだわられて作られていたのが分かります。

03:51 ファミリーにトラックラリーに行くことを宣言するホーマー
台本上は「みんなに言っとく事がある…見に行く事にした」とあるところ、最終的な音声では語尾に「よ」が追加されています。
1字の追加でホーマーの口パクがピッタリに!

04:16 土曜日の予定がバッティングしてしまって嘆くホーマー

大平さんが台本に書き込まれていますが、大平さんホーマーの「トホホ…」は本当に情けなくてホーマーらしくて最高です!

04:34 会場を静めようとするスキナー校長

台本上は「みなさんお静かに願います」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「みなさん一寸お静かに願います」に。
大平さんが、タツノコプロの「とんでも戦士ムテキング」で兄弟役を演じ、ファン感謝祭をやっていたときに久々に会いたいとおっしゃられていた、スキナー校長役の青森伸さんのセリフにもちょい足しされています。

05:37 未完成なのに長い交響曲にすっかり飽きたホーマー
台本上は「ダラダラダラダラ…何時間の曲作ったんだよ」とあるところ、最終的な音声では語尾に「もう」が追加されています。
こちらも口パクに合うように、シーンに合った声を大平さんが追加されているわけです。

05:42 リサの演奏を褒めるフランダース
台本上は「リサちゃん良かったねエー 毎日よっぽど練習したんでしょう」とあるところ、最終的な音声では「リサちゃん良かったねエー あれは相当フィンガリングの練習してるねになっています。
この後の、ホーマーの不満なセリフを引き立てるため、あえて原語版に忠実な専門的な話をするセリフに現場で変更されたようです。

05:48 フランダースにイラつくホーマー

台本上は「リサの才能だよ」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「シッタカぶりめ!」に。
ここもあえて原語版に忠実なセリフになっています。
ホーマーの表情と、気に入らないフランダースに対する「知ったかぶりめ」というセリフはぴったり!

07:20 大絶叫のファミリー
家族揃っての大絶叫は大迫力!

07:40 ホーマーを救助している係員たちに声をかけるバート
台本上は「もっと力入れてひっぱって」とあるところ、最終的な音声ではほらほらちゃんとひっぱって」に。

07:55 修理代の小切手を受け取るマージ

台本上は「まあーどうもすみません」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「まあーおそれいりますになっています。
よりマージらしさが出るセリフを、夫・ホーマー役の大平さんも考えられるというのは素敵すぎです。

08:20 救助されるホーマー
原語版ではホーマーより係員の声の方が大きいのですが、吹き替え版では大平さんホーマーの叫び声が誰よりも大きく響いています。
定番の「痛いんだってば!!」もアドリブで投入されています!

08:24 レース実況
台本上は「さあ皆さんご注目ください今回の紅一点…」とあるところ、大平さんの台本上にも書き込まれていますが、「今回」「今に変更されています。
細かい部分ですが、日本語吹き替え版としてのプライド、日本語に対するこだわりがやっぱりすごいです!

08:34 ミズ・モンスターを応援するリサ

原語版では“Another barrier broken. Ride on, sister!”になっており、台本では「よし応援しちゃうか ライトオン・モンスター!」と、女性の地位向上に対して意識の高いリサのセリフをあえて拾わないものとなっていましたが、現場で「女性の進出ステキだわ イェーイ・シスター!」に変更されたようです。
後のエピソードで、リサのこのあたりの意識の高さをフィーチャーした話も出てくることから、セリフ変更は大成功であったことが分かります。
この辺りは、本当にセンスに尽きると思います。

08:56 マードックの紹介アナウンス

原語版では“If he's not in action, he's in traction.(直訳:アクションをしていないときは、牽引している)”となっているところ、翻訳家の徐さんの手にかかると「挑戦していない時は、入院している時」になっちゃいます!
牽引は、骨折の整復のための治療法でありますが、言葉で聞いてもすぐピンと来ないですから、そこを入院という言葉に置き換えて、ギャグとして最高のセリフに仕上げられているわけです!
また、原語版では“action”“traction”で韻を踏んでいますが、日本語でそこは再現できないので、「時」を重ねることで韻を踏んで、楽しい語感に仕上げられています。まさに名人芸!

11:28 友達に心配されるバート
台本上は「外野は黙ってな」とあるところ、最終的な音声では「外野は黙ってなってになっています。
ここも口パクとの調整でセリフが足されたものです。実にバートっぽい口調で、キャラの特性を完璧につかんでいる堀さんならではの微調整ですね!

11:55 バートにキスをするマージを見たホーマー

台本上は「何やってんだ 怒るんだろう」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「何やってんだ るんだろう」になっています。
「怒る」は相手にとにかく怒りをぶつける表現であることに対して、「叱る」は教育的指導を意味することから、大平さんがこの場合は後者だと判断、変更されたものと思われます。

11:58 マージに大丈夫かと聞かれたバート
台本上は「元気元気 見て縫ったんだここ カッコイイだろオ」とあるところ、最終的な音声では最高だよ 見てここ縫ったんだよ 跡が残ってるだろいいだろになっています。
やんちゃな少年感満載で堀さんバートの良さが詰まったセリフだと思います。

12:29 スタントの真似をしてけがをした子供達
ヒバート先生の「この子はスーパーマンを真似て足をぽっきり折ったんだし…」というセリフは、ホーマー役の大平さんが昔スーパーマンの吹き替えをやっていて、その大ヒットにより日本でもスーパーマンを真似た子供達の怪我が多発した、という話を知っていると、より感慨深いシーンだったりします。

13:41 浮かない表情のバート

台本上は「俺もう飽きちゃったよー」とあるところ、大平さんの書き込みにもあるように最終的な音声では「俺もう飽きちゃったんだよ」に、さらにその後の「…“チャレンジ”って感じのするやつやりたいよ」は、「…“チャレンジ”って感じのするやつやりたいんだになっています。
ここも微調整ですが、バートの口パクにぴったり収まっています。

14:14 バートに助言?するオットー
原語版に合わせて、台本にも「クール!」とありますが、最終的な音声では「カッコイイ~!」になっています。
自然に日本語できるものはすべて日本語化されていたようです。

15:02 スタントをやると言って聞かないバートにリサは…
台本上は「お願いどうしてもやるなら その前にあの人に会って」とあるところ、最終的な音声では「お願いどうしてもやるなら その前に会わせたい人がいるのになっています。
この変更によって、リサがバートにスタントをやめさせたい気持ちがより強く感じるセリフになっているように感じます。

15:09 2人を病室に案内するヒバート先生
台本上は「先生はスタント関連の怪我を減らす為なら何でもするよ さあ入って…」とあるところ、最終的な音声では「先生はテレビ番組関連の怪我を減らす為なら何でもするよ さあ中へ入って…」に。
原語版は“entertainment-related(エンターテイメント関連)”なので、オリジナルに近いセリフにしつつ、前の子供たちの怪我のシーンにリンクするように工夫されたわけですね。

16:54 ホーマーに叱られたバートがリサに対して…
台本上は「おしゃべり」とあるところ、最終的な音声では語尾に「め」が追加されています。
こちらも口パクにぴったりですし、メチャクチャバートっぽい!

17:07 バートにドーン!と雷を落とすホーマー

台本上は「これでこの話はおわりだ父親にどなられちゃどんな悪タレだって逆らえないだろ」とあるところ、最終的な音声は大平さんの台本上の書き込みからも分かるように「どうだ怒ってやったぞ誰かがああいうバカな考えを正してやらなきゃな」になっています。
原語版では“There, I've done it. I'm glad somebody finally stepped in and put an end to this nonsense once and for all.(直訳:やっとこの馬鹿げたことに誰かが終止符を打ってくれたよ。)”なので、変更後のセリフはより原語版に近い意味合いを持ったセリフになりつつも、より日本的な表現になっていることが分かります。

17:12 自分の部屋に向かうバート
台本上は「ヘッ ダメって言った?24時間俺を見張るなんてムリだね 俺…親父のスキ見てスケボーひっつかんで峡谷行っちゃうもん」とあるところ、最終的な音声では「ヘ~んだ ダメって言った?24時間俺を見張るなんてできっこないんだから 俺…親父のスキ見てスケボー持って峡谷行っちゃうもん」になっています。
堀さんのバート節さく裂です!

17:51 ホーマーから峡谷に行くのか問われたバート

台本上は原語版の“Maybe.”に忠実に「多分」とありますが、大平さんの書き込みからも分かるように最終的な音声では「かもね」になっています。
いかにもバートの減らず口らしいセリフでぴったりかと思います。

18:12 バートに約束させようとするホーマー
台本上は「もし守らなかったら…一切信用しない」とあるところ、最終的な音声では語尾に「ぞ」が追加されています。
口パクもぴったりで、説教な感じもより出ていますね。その直後に、またホーマーの「ぞ」が出てくるので、リズム感も良いですね!

18:44 バートがわざと遅れているというミルハウスの説に納得するネルソン

台本上は「ヘエー役者だなー」とあるところ、大平さんも台本に書き込まれていますが最終的な音声では「ヘエーエンターテイナーじゃんになっています。
先ほど書いたように横文字は自然な範囲で日本語化されていることが多いですが、ここは原語版の“showman”に近い表現で、日本でもメジャーな表現である「エンターテイナー」という言葉が採用されたようです。

19:01 バートにまんまと騙されたホーマー
台本上は「信じるなんてどうかしてた」とあるところ、最終的な音声では最後に「俺は」が追加されています。
このホーマーがバートの部屋に入るシーン、大平さんの声の迫力がすごいです!騙された悔しさが詰まった表現です!!

19:44 バートのジャンプをとめようとするホーマー

台本上は「こうなったら親としてできる事は一つ 代わりに父さんが飛んでやる」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「こうなったら親としてできる事は_ 代わりにオレが飛ぶしかなんだになっています。
また、その直後の「遊び半分でこんな事やってお前はよくても家族がどんな気持ちがするかこれで変わるだろ!」は、「そうでもしなきゃバカな事で命を捨てようとするのを見て家族がどんな想いをするか分かんないだろう」になっています。
こうやって現場でもセリフが練り直されるシンプソンズのスタジオ、本当にすごい場所ですね!

20:12 謝るバート
台本上は「ご免ね親父(原語版は“I love you, Dad.”)」とあるところ、大平さんの書き込みからも分かるように最終的な音声では「ご免ねホーマーになっています。
原語版でもバートがホーマーのことを名前で呼ぶことは多くありますが、ここは原語版では"Dad(=親父)"なところをあえて名前呼びに変えているわけですね。

20:15 バートに嬉しい気持ちを伝えるホーマー

台本上は原語版通りに「なあバート これほど親子の絆を強く感じたことはなかったな」とあるところ、大平さんが映像を見てアレンジを入れられたようで、最終的には「なあバート これほど親子の絆がアラだんだん離れていくよになっています。
このシーンのセリフ、台本を確認するまでははじめからこうだと思っていたのですが、まさか大平さんのアレンジによるものだったとは驚きです。
まさに“Japanese Homer”の大平さん、ホーマーならこう言う!という世界観が、この時点で完璧に完成されていらっしゃいました。

20:20 ホーマーの大絶叫!

叫び声に挟まるセリフはすべて台本にはありません!はい、大平さんのアドリブです!!

21:17 病室でのホーマー
台本上は「あんたもこの子の親になってみなさいよ」とあるところ、大平さんによって手が加えられて「さい」が削られています。
こちらは逆に口パクに収まりきらないため削ったものと思われますが、オチのシーンとして逆にテンポの良さ、切れ味が増した感じがしますね。