シンプソンズ・ファンクラブ・ブログ

「ザ・シンプソンズ」を日本で広めるために日本語吹替版のエピソードガイド、グッズを買えるお店の紹介、大平透さん使用のアフレコ台本の研究、等々を掲載しています。

大平さんのシンプソンズ台本:シーズン2、第22話「バートは命の恩人:Blood Feud」

シーズン2、第22話「バートは命の恩人:Blood Feud」July 11, 1991

(日本初回放送:1993年2月21日、録音日:1993年1月28日)
simpsons333.hatenablog.com

本エピソードがシーズン2の最終話です。
なお、WOWOW放送時にはシーズン1と2が切れ目なく放送され、ついでにシーズン3の#1「マイケルがやって来た!」、#3「ホーマーの願い事」まで一緒に放送されたことから、シーズン1全13話、シーズン2全22話、シーズン3の2話の計37話がリピート放送もはさみつつ、一気に放送されたことになります。


<以下、ネタバレになります>


【画面】(台本上の通信欄)

・01:37 字幕「落ちついて大丈夫」「放射能もれ 窓を閉めて」「炉心溶解 逃げろ」「爆発 ざんげを」

・06:24 病院

場面説明


【音声】

・02:26 倒れているバーンズ
台本上は「医者はダメだ!やぶ医者に私の体は触らせないぞ!」とあるところ、最終的な音声では「医者はダメだ!やぶ医者なんかに私の体は触らせないぞ!」になっています。
バーンズ役の北村さんも細かい言い回しまでバーンズらしさを演出されていらっしゃいました。

・03:05 ヒバート先生から社長の血液型がOのRHマイナスと聞かされたスミサーズ。

台本上は「私はBのRHプラス《ああ平民の血め…》」とあるところ、最終的な音声では「私はBのRHプラス《ああ庶民の血だ…》」になっています。
こちらも口調がよりスミサーズらしいものに。

・03:25 スミサーズによる社内放送
台本上は「O RHマイナスの血液型の者がいたら外の献血車に申し出てくれ」とある部分が、最終的な音声ではRHマイナスOの血液型の者がいたら外の献血車に申し出てくれ」に、またその後の「以上」とある部分が、最終的な音声では「以上になっています。
細かい部分までこだわられているのがよく伝わってきますね。

・03:37 レニーとカールに対してホーマーは…

台本上は「何てバカな事言ってんだ…このチャンス放っとくのか」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「何てバカな事言ってんだ…このチャンス放っとくのかに。
また大平さんのメモからも分かるように、「何言ってんだ」の部分はS1#9「恋におちて」で吹き替えのセリフに採用されていた、ヒロシ&キーボー「3年目の浮気」から引用したと思われる「馬鹿いってんじゃないよ」が。
最終的な音声には採用されていませんでしたが、大平さんは常にベストのセリフを追求され、事前に準備されていたことがよく分かるものですね。
simpsons333.hatenablog.com

www.youtube.com

・03:51 カールに鋭い指摘をされたホーマー
台本上は「すンません」とあるところ、最終的な音声では「すンまん」になっています。
短いセリフですが、このテンポとセリフ回しはまさに職人技です。

・04:32 なんでも知っているマージへホーマーからの質問

原語版では“Earmuffs(イヤーマフ)”で台本上は「マスク」になっているのですが、大平さんによって手が加えられ、最終的には「俺のパンツ?」になっています。
それに続くマージの答えは「XL」と変えることなく、ホーマーらしい質問をアレンジして作られた大平さん、さすがです!

・05:04 輸血したくないバートにホーマーは…

台本上は「あるのは黙秘権だけだよ」とあるところ、大平さんによって手が加えられお前にあるのは黙秘権だけ_になっています。
より強い口調を演出されるために大平さんが考えられたようです。

・05:06 マージもバートを説得
台本上は「バート 困ってる人は助けるのが人間としてのつとめでしょ」とあるところ、最終的な音声では最後に「お願い」が追加されています。
セリフの追加でマージの口パクにぴったりになるだけでなく、さらに母としてのマージの優しさも表現されているように思います。

・05:12 枕元で息子に語り掛けるホーマー

台本上は「パパは何もただで血をやれと言ってるんじゃない」とあることころ、大平さんによって手が加えられ「パパは何もただで血をやれと言ってるんじゃないんだになっています。
また、その後のヘラクレスとライオンの話をするホーマーのセリフも、台本「足にトゲがささった」→音声「足にトゲがささっちゃったんだ」、台本「トゲはビクともしない」→音声「トゲはビクともしないんだ」、台本「いい物をあげた」→音声「いい物をあげたんだって」といった具合に、優しく息子に語り掛けるホーマーを、大平さんが見事に表現されています。

・05:58 献血車に突撃するホーマー

台本上は「人の命がかかってるんだ早く開けてくれ」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、最後に「おい開けろ」と追加されています。
ホーマーの口パクに合わせつつ、焦っている感も表現。

・07:10 若い血注入完了のバーンズ
台本上は「私はよみがえった!」とあるところ、最終的な音声では「私はよみがえった!」になっています。
北村さんバーンズの力強い叫び!

・07:28 活力みなぎるバーンズを見たホーマー

ホーマーのセリフ「社長が回復した ひともうけだ!」の直後にカーボンロッドを落とすシーンは原語版では無音なのですが、台本の書き込みからも分かるように大平さんが「アラ」とドジなホーマーのセリフを追加されています。
また、「ひともうけだ!」の部分は、原語版では“Jackpot!(賭け事で大儲けする意)”なので、翻訳家の徐さんが日本の視聴者に分かりやすく適切なセリフを当てはめられているわけです。

・08:12 郵便チェックをするホーマー

原語版では“Bill, bill... summons, bill...”とある部分が台本上は「請求書…請求書…請求書…請求書…」なのですが、最終的な音声では大平さんによって手が加えられた「請求書…追徴税…請求書…呼出し状…」になっています。
各種督促関係書類の語感が楽しい!

・08:28 大興奮のホーマーはリサにライトアップを頼む

台本上は「リサ明かりを弱く!いやもっと明るく!何かしろ!」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「リサ明かりを弱く!いやもっと明るく!派手にしろ!」になっています。

・08:34 バーンズからの封筒の中身を想像するホーマー
台本上は「ちょっとうすいけどまっいいか小切手だろ」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「ちょっとうすいけどまっいいかキットこりゃ小切手だろ」に。
言葉の生感がより出ていますね。

・08:42 まだ期待しているホーマー
台本上は「まだこれからだ絶対いい事が書いてある」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「まだこれからだ絶対いい事が書いてあるはずだになっています。
ホーマーの口パクに合わせ、さらに今後の展開を視聴者に想像されるような言葉遣いを大平さん自ら演出されているのがよく伝わってきます。

・09:54 キレたホーマーはバートにバーンズへの仕返しの手紙を書かせる

原語版では“You stink!(お前は臭い!)”となっている部分が吹き替え版では「ふざけるな守銭奴!」、また“You are a senile, buck-toothed old mummy with bony girl arms.(あんたは骨ばった女の子みたいな腕の年老いた出っ歯のミイラだ)”「恍惚のもうろく爺イ、女みたいにガリガリ腕のそっ歯のミイラめ」になっています。
ただ直訳するだけでなく、キャラクターの感情を完璧に解釈され、センス溢れる“作品の世界観に合った”日本語を当てはめられている、翻訳家の徐さんのさすがのテクニックです!

・11:02 例によって食べながらしゃべるホーマー

後からマージに聞き返されるセリフのため、大平さんが台本の「ベターハーフのイミが」の横に「ワカラないように」とメモされています。
出来上がった音声でも、絶妙にモグモグして分かりにくく喋られています。

・12:01 今日もしっかり怒ってるホーマー

ホーマーによるバートへの首絞めに欠かせないセリフには「お前って奴は」がありますが、それ以外にここのシーンにもある「コノ~!」も同じくらい重要ですね!
そして、台本に「コノ~!」が入っていなくても、ご自分でしっかり追加される大平さんもさすがです!


「第2回シンプソンズファン感謝祭」にてファンからのリクエストに応えて、「お前って奴はこの~!」と熱烈ファンサの大平さん

・12:51 バートにまともな指摘されるホーマー
台本上は「そりゃダメになるさ だから何だ?」とあるところ、最終的な音声では「そりゃダメになるさ だから何だってんだよ?」に、また、その後の「どーのこーのさようなら」とあるところは、「どーのこーのさようならってになっています。
喋り言葉にとにかくこだわられた大平さんの細部までの目の配りよう…素敵です。

・13:22 男らしく・・・逃げるホーマー
台本上は「それでも俺は逃げる!」とあるところ、最終的な音声では「それでもは逃げる!」になっています。
ホーマーの一人称は「俺」で間違いないのですが、その前のセリフで郵便配達員とよそよそしく話すシーンでホーマーが「私」を使っているため、直後のセリフもあえて「私」に変更して吹き替えをされたようです。
大平さんの演出家としてのセンスがここでも光ります。

・14:13 バーンズのファーストネームは?
原語版でもホーマーのダン・カステラネタ氏“I don't know”が独特なリズムで笑えるのですが、吹替え版の大平さんホーマーの「知りません」も、大平さんらしいリズムとテンポでとっても面白い!!
また、その後の「いい計画だったのに」は、台本上は「いい計画だったになっています。

・14:25 ソファに寝ころび悩むホーマー

台本上にある「リサちょっと パパは今心配しようとしてるんだから」の後にセリフを追加できると考えられた大平さんは、リサのセリフにある「12面体」を使った言葉遊びの「自由にメンタイコ?」というセリフを考えられて、追加候補としてメモされていたようですが、最終的な音声では「静かにしてちょうだい」(ちょっと財津一郎さん風?)と吹き込まれています。
ハクション大魔王のコロッケ→ハンバーグへの変更や、笑ゥせぇるすまんの「ホーッホッホッホッ」等々、アイデアマンでもあった大平さんはご自身で作品がより良い方向になるよういろいろと考えられていらっしゃいました。

・16:26 後悔しているホーマー

台本上は「いつも怒ってるみたいだけどあれほど怒ったのは初めてだ」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「いつも怒ってるみたいだけれどあれほど怒ったのは初めて見たに、またその後の「何を血迷ってあんな事書いたのか」「何を血迷ってあんな事書いちゃったのか」になっています。
こちらでも細部までこだわられています。

・17:00 情緒不安定なスミサーズ
スミサーズ(目黒光祐さん)ジョーイ(辻親八さん)のテンポの良いセリフの応酬が笑える!

・17:50 スミサーズの告白を聞いたバーンズ

台本上は「何だと…どうしてだ?ワケを言え!」とあるところ、最終的な音声では「何だと…どうしたんだ?ワケを言え!」に、またその後の「ユダめ!」は日本の視聴者向けアレンジとして「なぜだ!」になっています。

・18:30 バートのイタズラ電話

今回は「モーノ・タコ」
台本上は「サンド・バッグ」で、原語版では“Mike Rotch(my crotchつまり「私の股間」)”になっています。

・18:45 キレるモー
台本上は「いつか絶対につかまえて背中にアイスピックで俺の名前掘ってやる!」とあるところ、最終的な音声では語尾に「ぞ」が追加されています。

・19:59 プレゼントとともに笑顔のバーンズ
台本上は「何しに来たと思ったね?」とあるところ、最終的な音声では「何しに来たと思ったね?」になっています。
細かい部分でもバーンズらしさを大切にされている北村さんです。

・20:20 デカ頭の使い道を考えるホーマー

台本上は「でも何かしら役に立つだろ」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「でも何か役に立つだろなあになっています。

・21:04 バーンズからの贈り物の感想を述べるホーマー

台本上は「人の命を助けて何を得た?無だ!無よりひどい こんなおっかない石のかたまり」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「人の命を助けて何を得た?ナッシン!無(ナイ)よりひどい こんなバカでかい石のかたまり」になっています。
大平さんは視聴者目線でどういうセリフが一番聴きやすいかもとにかく意識されていたようです。

・21:25 マージのテーマにひとことのホーマー

台本上は「俺が手紙を書かなかったら頭ももらえなかった」とあるところ、最終的な音声では「俺が手紙を書かなかったら頭ももらえなかった」になっています。
「石」だけの追加ですが、ホーマーがプレゼントをどうでもよく思っている感じがよく出てますよね。

・21:45 マージの「でも将来いい思い出になるわよ」を受けて、それに返すホーマー

台本上は「アーメンソーメンヒヤソーメン(原語版では“Amen to that.”で「異議なし」の意味)」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「ウチは思い出が多すぎんだよ…」になっています。
S2#9「マージの熱き闘い」のホーマーによる締めのセリフ同様、趣旨を変えずに、はじめからそうであったかのようなセリフに置き換える大平さんの職人技がさく裂しています!!
ここまでシーズン1と2のエピソードを吹き替えられて、ホーマーそしてシンプソンズという作品の特性を完全に掴まれた大平さんだかえこそ出るセリフです。バーンズ社長の言葉を借りればまさにエクセレント!!です。
simpsons333.hatenablog.com
simpsons333.hatenablog.com