シーズン1、第12話「クラスティは強盗犯?:Krusty Gets Busted」April 22, 1990(日本初回放送:1992年10月31日、録音日:1992年10月8日)
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台本の表紙から分かるように、当初は「クラスティが強盗犯?!」というタイトルが予定されていたようです。
WOWOWでの放送やVHS発売時には「クラスティは強盗犯?!」に変更となり、後年リリースされたDVDでは「クラスティは強盗犯?」が使用されています。
(さらに、配信では「クラスティは強盗犯」に。どんどん感嘆符が消えていく?!)
<以下、ネタバレになります>
【画面】(台本上の通信欄)
・02:48 原音使用できない場合使って下さい
『殴って お返し 殴ってお返し お返し お返し お返し イッチー&スクラッチーショー』
最終的にはシリーズ通して原音がそのまま使用されることになりますが、イッチー&スクラッチーのテーマ曲が吹き替えされる可能性もあったという貴重なデータです。
・03:14 大人に分かってほしいならゴールデンタイムにやるわよ
リサのセリフの別案(こちらは使用されず)
・03:22 プレミアムアイスクリーム 景品つきの高級アイスか? それともただの高級アイスか?
マージが言っているプレミアムアイスクリームとは?翻訳上どう解釈するかという、制作上のメモ。
・03:46 クイックEマート 初めて名前が出ました ずっと登場している店員が店主です
番組立ち上げ時ならではの注釈ですね!
また、それに合わせて、香盤表も今まで"店主"だったのが、"アープー(店主)"という記載に変更されています。
・05:00 バートの口ぐせ 今まで"ぶったまげー"等に訳していましたが、このまま使えると思うので これからこれで行きます
こちらも立ち上げ時ならでは!
今までも"アイカランバ"が吹き替え版でそのまま使用されているシーンがありましたが、ここから完全に"アイカランバ"に統一して行くということになったわけですね。
お馴染みのセリフがこうやってシリーズのお決まりとして定着していったのか、と非常に感慨深いです。
・クラスティの家
状況説明。
・07:14 ダフビールの宣伝 ホーマーが自殺をはかる#3で登場
翻訳家が徐さん(+制作チーム)で一貫しているからこそ、このような細かいネタまでも拾えるため、
結果的に作品のクオリティにも大きく影響しているのだと強く感じます。
・08:03 アープー はいはい強盗に入られたら逆らわない それがコンビニの鉄則ね
出てきていいよ旦那さんヒーローになれるチャンスを逃したね旦那さん
バートのセリフと被るため、アープ―のセリフは画面欄に記載されています。
・08:53 字幕「クラスティ逮捕」
・10:58 精神異常はさけました
クラスティに詰め寄る記者のセリフで原語版では"Will you plead insanity?"の部分、そのまま訳すと「精神異常(心神喪失)を主張しますか?」になりますが、そこを少しマイルドに「気は確かでした?(音声では、気は確かですか?)」と翻訳してあるというものです。
当時のWOWOWでの放送ルールも関係しているのかもしれませんが、このような細部にまで渡る気遣い、こだわりから、本当に丁寧に制作されていたことが分かりますね。
・13:22 法廷
状況説明。
・15:45 字幕「ペースメーカーを埋めてる人は使えません」
・20:14 サイドショーボブ 心を開けば必ず運命は好転する
"足は大きいけど"連発の中に挿入されるサイドショーボブのセリフですが、他のセリフと混ざらないように画面欄に記載されています。
・22:01 字幕「親友バートへ クラスティ」
【音声】
・03:19 マージからの電話に出るホーマー。
ドーナツを頬張りながらの「はいよ」のため、台本上には大平さんによってこんなメモが。
本当にものを食べてる感がすごいです。
・03:45 バートの"D'oh!"。
台本上にはこんな指示が。
また、この部分を強調するためか、前のホーマーの"D'oh!"と合わせて、別録りされたようです。
・03:56 アイスの品定めをするホーマー。
美味しそうなアイスを次々発見するシーンですが、大平さんが台本に書き込まれたホーマーのリアクションのメモの数々を見ているだけで楽しくなってきますし、あの声が浮かんできませんか?
・04:55 タコセットの感想を言うパティ。
原語版では"Mmm, delicious."、台本上は「《 》おいしかった」とあるところ、最終的な音声では、「最っ高!おいしかった」になっています。
鈴木れい子さんの心から湧き出るようなセリフ運びに痺れます!
・05:16 似顔絵を見て動揺するホーマー。
原語版では"Cruddy, Crummy"とそれっぽい名前を挙げながらクラスティの名前を思い出すシーン、台本上にも「クラディ」と原語版の名前をそのまま持ってきてありますが、大平さんによって「クラッカー」に修正され、最終的な音声では結局間違えた名前が出てこないまま、クラスティに行きつくというセリフになっています。
このような台本への書き込みを見ると、ホーマー役の大平さんや春日ディレクターをはじめとした皆さんが試行錯誤しながら作品を完成させていたのが伝わってきます。
・07:12 バートにクラスティのことを尋ねるホーマー。
台本上には「お前も好きなのか そのクラスティとやら」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、「お前も好きなのか クラスティって」になっています。
ここの前後の会話のテンポ、特に速いように感じるのですが、この変更によってさらにテンポがアップしているように思えます。
・07:48 再びコンビニのシーン。
こちらはテレビ画面から流れる音声シーンということで別録りであったようです。
・08:11 マージの意見を真っ向から否定するホーマー。
台本上は「お前は幸せだね俺は見たんだよ この目ではっきり クラスティはハ・ン・ニ・ンだよ ハ・ン・ニ・ン」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、「お前は幸せだね俺は見たんだよ この目ではっきりと クラスティはハ・ン・ニ・ンだ ハ・ン・ニ・ン」に変更されています。
1文字単位の微調整なのですが、本当に細部にまでのこだわりが凄いんです!
・11:57 法廷でコンビニの監視カメラに映ったホーマーの映像が流されるシーン。
台本上の「すまんなバート」(ホーマーの顔が映っていないシーンなのでOffのメモ有)の"な"が大平さんによって削除され、「すまんバート」に。
さらに、台本上には記載がない、監視カメラのホーマーの声も大平さんによって書き込まれています。
・16:55 サイドショーボブの熱唱の歴史はここから始まった!
台本上にも"英語で歌う"とあるように、サイドショーボブ役の村山明さんによってコール・ポーター「Ev'ry Time We Say Goodbye」が英語歌詞で歌われています。
・18:43 不機嫌な表情のバートを見つけるサイドショーボブ。
台本上は「アレ一人だけつまらなそうな顔をしているお友達が…」とあるところ、最終的な音声では最後に「いるね~?」が追加されています。
優しい子供番組の司会者感を増強させるセリフ変更ですね!
・19:38 バートの推理を否定すサイドショーボブ。
台本上は「《 》またまたバート君は…字ってもんは読めなくても模様して見れば十分楽しめるじゃないか」とあるところ、最終的な音声では「《 》またまたバート君、字なんてものはね、読めなくても模様して見れば十分楽しめるじゃないか」になっています。
ちょっとした言い方のアレンジですが、サイドショーボブのキャラクターが良く出た話し方になっていますね。
・21:39 ウィガム署長から謝罪を受けるクラスティ。
台本上には「あたり前だタコお巡り!」とあるところ、最終的な音声では「あたり前だこのタコ!」に。
・21:41 クラスティに謝罪するホーマー。
台本上は「クラスティ 男らしく非を認めるよ 法廷で指さして悪かった 刑務所は地獄だと聞くけどひどい目にあわなかった事を祈るよ」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、「クラスティ 男らしくあやまるよ 法廷で指さして悪かった 刑務所は地獄だそうだが、アンタがひどい目にあわなかった事を祈るよ」に変更されています。
よりしゃべり言葉として自然に、より分かりやすい表現になっていますね!
本エピソードがシーズン1最終話の第13話(WOWOWでは第12話として放送)ですので、大平さんの台本研究記事もシーズン1が完結しました。
次回からは、吹き替え収録もシーズン1から間髪入れずに行われた、シーズン2の台本研究をスタートします!