シンプソンズ・ファンクラブ・ブログ

「ザ・シンプソンズ」を日本で広めるために日本語吹替版のエピソードガイド、グッズを買えるお店の紹介、大平透さん使用のアフレコ台本の研究、等々を掲載しています。

大平さんのシンプソンズ台本:シーズン2、第14話「セルマの結婚願望"Principal Charming"」

シーズン2、第14話「セルマの結婚願望"Principal Charming"」February 14, 1991

(日本初回放送:1993年1月16日、録音日:1992年12月10日)

スキナーの母:アグネスを演じられている鈴木れい子さんが今回はパティ役でスキナー校長とたっぷり交わるエピソード。大人なお芝居に注目です!
ちなみに、表紙の“3”は3本録りの3本目ということ!
simpsons333.hatenablog.com


<以下、ネタバレになります>


【画面】(台本上の通信欄)

・01:56 字幕「車両部」

・06:21 字幕「カール もてすぎる」

・06:24 字幕「スミサーズ タコ」

・06:27 字幕「ミス・フィンチ 男にあらず」

・06:54 字幕「硫酸ナトリウム」

・07:07 字幕「アープー スナックが安くなる でも危険な職業」

・07:21 字幕「明るい笑顔 でも まるで知らない人」

・07:30 字幕「スモーカー でも ただの広告」

・09:31 字幕「スキナー校長」→「物言いが大げさ アイツを嫌ってる 身なり良好」→「女性が好きかも」

・14:21 原音 まだウェイターの助手をやってる 差別なので変更

変更の結果、「30近くなって仕事も満足にできない」になっています。
大平さんのご近所さんだったアメリカ人のご婦人が、大平さんがホーマーをやっていることを知って冗談交じりに「シンプソンズは下品だから嫌いだよ!」と言われていたそうですが、上記のような考慮のされ方が日本版シンプソンズをより魅力的なものにしていると思えるので、原語版がちょっとキツすぎると感じられていたご婦人にはぜひ日本版をお楽しみいただきたかったですね。

・17:49 モーの店

状況説明

・20:59 字幕「小学校のオーナー バート・シンプソン」


【音声】

・01:02 バーニーの電話に起こされるホーマー
台本上は「朝っぱらから何だ」とあるところ、最終的な音声では「朝っぱらから何だになっています。
ホーマーの口パクの動きと音声を合わせるための調整で、大平さんが足されているようです。
また、セリフ以外にも、うめき声が息遣い等、本当に寝起きのような雰囲気が出まくっているところも、さすが大平さんといったところ!

・01:12 昨晩の肉の面影を味わうバーニー
台本上は「指にソースがしみてまだ味がする」とあるところ、最終的な音声では「指にソースがしみてまだ味がするになっています。こちらも口パク調整のためと思われます。
ちなみに、後年バーニーやモーといったお酒キャラたちが、語尾に「~わ」をつけることがちょこちょこあるのですが(台本にも初めからそう書いてある)、広瀬さんバーニーはそれが定番化する前に「~わ」をつけていたことが分かり驚くとともに、演者と翻訳家、スタッフの共同作業で“日本語吹き替え”の世界観を作っていくのだということを改めて痛感しました。

・01:29 早速マージをバーベキューピットに誘うホーマー

台本上は原語版に忠実に「今から5つの単語を言うぞ(原音:Greasy Joe's Bottomless Bar-B-Q Pit.)」になっているのですが、“生きた日本語”表現にこだわりをお持ちの大平さんはここを「今から云う事判るか?に書き換えされ、吹き込まれました。

・01:44 マージを説得しようとするホーマー

台本上は「土曜の夜子供は姉さん達におしつけてから追い出されるまで食いまくる」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「土曜の夜子供は姉さん達におしつけてから追い出されるまで食いまくるんだ(よ)になっています。
口パクと合わせることはもちろん、セリフの追加によって興奮して畳みかけるホーマーの必死さがよりプラスされているように感じます。

・02:12 イチャイチャ2人組に茶々を入れるパティ
台本上は「やるならハネムーンでやって!」とあるところ、最終的な音声では「やるならハネムーンでやればに。
バシッと言い放つイメージから、ドライに怒っているイメージに変化しており、確かによりパティっぽい!

・02:35 シリーズ初登場のモグラ男にも当たりがキツいパティ
台本上は「男らしく諦めンの!」とあるところ、最終的な音声では「男らしく諦め!」になっています。
さらにドライでキツい!
ちなみに、この後でモグラ男はレニー役の朝戸鉄也さんの持ち役になるのですが、本エピソードではスキナー校長役の青森伸さんがアテられていました。
パティ役の鈴木れい子さんは、スキナー母のアグネス・スキナー役でもあるので、偶然にまたしても青森さんの役を怒るキャラの担当に!

・03:04 スタンレーにも当たりがキツいパティ
台本上は「邪魔!どいてどいて」とあるところ、最終的な音声では「邪魔!どいて!」になっています。
乙女心全開のセルマとのコントラストをつけるため、パティはとにかくキツめに演出されています。
ここも、ベテラン鈴木れい子さんならではのテクニックが満載です!

・03:19 セルマの歌

一城さんがドスの効いたセルマの声で歌う曲もまた最高です!
マージと同じ演者の方がアテられていると知らなかったファンの方も結構いたほどの演じ分け!!

・04:09 たらふく食って大満足のホーマー

台本上は「俺みたいなのが行っちゃ商売あがったりだろ」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「俺みたいなのが行っちゃ商売あがったりだろうなァー」に。
このときのホーマーの声色がとにかく嬉しそうな感じがとてもよく出ていて、あぁ本当に旨かったんだろうなと視聴者に思わせるほどのパワー溢れたお芝居です。

・04:16 パティのいびき

ここ、原音流用ではなく、しっかりとパティの鈴木れい子さんが吹き込まれています。
原音より若干無呼吸症候群気味(?)ないびきが味わい深い!笑

・04:34 セルマの切実なお願い
台本上は「手遅れになる前に誰かいい人見つけて」とあるところ、最終的な音声では「手遅れになる前に誰かいい人見つけてになっています。
たった1字分の追加ですが、この1字にも一城さん演じるセルマの想いが詰まっているように思います。

・05:40 ちょっと不満を抱きながらもマージの言うことを聞くホーマー

台本上は「ああ」とあるところ、大平さんによって手が加えられ、原音と同様に「OK」になっています。
イントネーションの付け方は、原語版のダン・カステラネタ氏のそれを忠実に再現しつつ、
大平さんのホーマーらしい豪快な返事になっています。

・05:47 ホーマーのマージへのツッコミ
台本上は「何でお前よりいい旦那もたなきゃならないんだ?」とあるところ、最終的な音声では「何でお前よりいい旦那もたなきゃなんないんだ!」になっています。
こちらも微調整ではありますが、ツッコミの強さやテンポを考慮して大平さんが手を加えられたようです。

・08:35 バートのイタズラ電話

今回は「ホーマーセクシュアル(Homer Sexual)」

・09:09 突如電話口に登場したスキナー校長に驚くモー
台本上は「ワオワオ…すみません校長さん 本当にどうも・・・混線したみたいで」とあるところ、最終的な音声では「ワオワオ…すみません校長さん 本当にどうも・・・あーなんか混線したみたいで」に。
モーの動揺がより表現されていますね。

・10:11 不自然に校長を誘うホーマー

台本上は「あの深いイミじゃなくてバートがいつもご迷惑おかけしてるほんのおわびですよ」とあるところ、最終的な音声では「あの深いイミじゃなくてバートがいつもご迷惑おかけしてるほんのおわびなんですけどもに。
台本上もたどたどしくとの指示があるように、あえて不鮮明な話方をするところで状況を見事に表現されています。

・10:40 校長を迎え入れるバート
台本上は「はい さ、どうぞ入って」とあるところ、最終的な音声では「はい さ、どうぞ入ってくださいになり、いつもよりかしこまったバートに。

・11:17 セルマ(ほんとはパティ)を紹介するホーマー

かしこまったホーマーを表現するため、大平さんも台本に細かくメモをされています。

・11:44 どうにかしてセルマを紹介したいマージ
台本上は「セルマもエジプトは嫌いなんです」とあるところ、最終的な音声では「セルマもエジプトは嫌いなんですになっています。
1字分の追加で、かしこまり感を出しつつ、こちらでも口パクぴったりに。

・13:30 歌うスキナー

“Inch Worm”を激渋ボイスで口ずさむスキナー校長!

・15:54 パティ、太極拳やってたの?
ちなみに、パティの鈴木れい子さんは合気道五段!!

・18:53 セルマの切り替え宣言
台本上は「そして次の列車をつかまえる」とあるところ、最終的な音声では「そして次の列車をつかまえるになっています。
口パク調整のための語尾への追加ですが、こちらでは追加した1字の中にセルマの切ないながらも強い決意が詰まっているように感じます。

・19:31~スキナー校長とパティの2人きりのシーン
吹き替えを担当されているお2人の大人のお芝居もとっても素敵です。

・22:04 文句ブツブツのバート

原音では言葉にならない言葉をブツブツ言っているバートなのですが、吹き替え版では台本上に「スキナーのタコ 信じられねー」としっかり記されており、堀さんがバートの口の形に合わせて、歯をかみしめる形で「スキナーのタコ 信じられねーよなーとはっきり目にセリフを言われています。
場合によっては今回のようなセリフとして原語版にない部分に日本語を当てはめるのも翻訳家のお仕事のうちになるわけですが、このようなところでも徐賀世子さんのセンスはさすがですね!

・今回のワンポイント:The Simpsons World Of Springfield Series4 Patty Bouvier(Playmates社製 2001年)

本エピソードから引っ張ってきたネタで、しっかりとスキナー校長の写真が!