シンプソンズ・ファンクラブ・ブログ

「ザ・シンプソンズ」を日本で広めるために日本語吹替版のエピソードガイド、グッズを買えるお店の紹介、大平透さん使用のアフレコ台本の研究、等々を掲載しています。

大平さんのシンプソンズ台本:シーズン1「ホーマー自然に帰る」

シーズン1、第7話「ホーマー自然に帰る:The Call of the Simpsons」February 18, 1990(日本初回放送:1992年10月17日、録音日:1992年9月24日)

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本国では第7話として放送されたエピソードですが、日本(WOWOW)では表紙のナンバリングからも分かるように、第9話として放送されました。
(第7話が「忘れられた英雄」(10/10(土)初回放送)、第8話が「シンプソン家のクリスマス」(10/11(日)初回放送))


<以下、ネタバレになります>


【画面】(台本上の通信欄)
02:32 字幕「ボブのキャンピングカー」

11:14 二人 滝つぼへ…

11:28 熊 マギーを襲う

12:35 熊の巣に連れて行かれるマギー

14:32 熊 リサにオモチャを与える

16:28 ホーマー泥の川へ

17:59 字幕「私はビッグフットの妻」

18:08 字幕「妻は叫ぶホーマーと呼んでやって」

18:18 字幕「ビッグフットはポークチョップがお好き」

18:59 二人 熊に会う

20:09 字幕「麻酔銃」

21:10 ドイツ学者のセリフの上に、"ドイツ語風 かために"、フランス学者のセリフの上に、"フランス風 フランソワーズ・モレシャンのノリで"、英国学者のセリフの上に、"英国風・シニカルに"と、それぞれ記載があります。
この指示は、かなりレベルが高いものかと思うのですが、これらに難なく応えられていたキャストの皆さんのレベルの高さを改めて感じます。

21:42 アナウンサー①「ではCMです チャンネルはそのまま」


【音声】
02:59 ボブ「それっ見よ!」「それっ見ろ!」に変更されています。
また、その後の「《どうお父さん?》人間が造ったものとは思えない まさに奇跡 芸術よ芸術」は、仮で入れられていたと思われる、《 》内のセリフが採用されたことにより、最後の"芸術よ芸術"がカットになっています。

03:32 バート「アーイ・カランバ!」
これが吹き替え版での2回目のアイカランバ!

06:34 (ホーマーだけ)意気揚々とキャンプに出発するシンプソン一家。
ホーマーのセリフ、台本上は「みんな、いいかぁ?…さぁ大自然よ シンプソンが行くどォ~」とあるところ、最後の"行くどォ~""行くど行くど行くどォ~"に変更されています。
原語版では"Here we come!"のみなので、よりホーマーの勢いがアップするセリフになっていますね。

06:55 到着を急かすバートに対するホーマーのセリフ、台本上は「着いたら言うから臭いあてゲームでもやってろ」となっているところ、最後に「コノ」が追加されています。
ホーマーの口の動きに合わせるため、現場で追加されたものと思われます。

07:53 断崖絶壁でとぼけるホーマー、台本上は「《 》」のみのところ、大平さんによって、お馴染みの「アラー」と書き込まれています。

08:21 みんなに裏切られるホーマー、このとき原語版は無音なため、台本にもセリフの記載はありませんが、大平さんの台本には「アリ」と書き込まれ、最終的な音声では「あん?アリ~(文字で表しきれない動揺の表現なので、ぜひ実際の音声をチェックです!)」となっています。

ここは、大平さんによるホーマーの気持ちになってのアドリブと思われます。
大平さんは常々、演技の"演"は演出の"演"でもあり、演者も自ら演出していかないといけないと言われていましたが、まさにこういうところに出ているものだと思います。

08:55 ホーマーに「うちみたいに?」とツッコミを入れるバート
ここ、原語版ではホーマーが話し終わるのを待ってバートがツッコむのですが、吹き替え版では話し終わる前にホーマーのセリフに被せる形でバートがツッコんでいます。
文句を言いたくてたまらない状況では、相手の話が終わる前に自分の言いたいことを話し始めてしまうことは現実ではあることですし、これによってセリフのテンポもよくなっていますね。
この辺りは、春日ディレクターの"生きた日本語"を尊重する演出によるものかと思われます。

08:57 動揺するマギーを見たホーマーがリサに対して言うセリフ、台本上では「マギーを見てやれ」のみですが、最終的な音声ではセリフの最後に「ホレ」が追加されており、
この2文字が追加になるだけで、ホーマーのリサに対する態度がちょっと柔らかいイメージになっています。

09:24 一人になって本音が飛び出すホーマーのセリフ「俺は何て事を…」の上に、大平さんによって"泣"とのメモ書きが。

09:33 ついにこの瞬間、大平さんホーマーによる吹き替え版"D'oh!"が完成したのです!!

一発目にしてこの完成度、そしてこの声量!!
ちなみに、台本への書き込みは「ダァ~ッ」。

(大平さんによる貴重な"D'oh!"のレクチャーはこちら!

10:22 野生動物を心配するバートに対してのホーマーのセリフ、台本上は「ちょっかい出さなきゃあっちも出してこない」とあるところ、大平さんによって"あっても…"以降が消され、代わりに"おそわれやしない"と書き込まれています。

10:56 バートの疑問に答えるホーマーのセリフ、台本上は「経験豊富な山男だと勘で分かるんだ 第六感ってやつが発達するんだ」とあるところ、"勘で分かるんだ"の後ろに"よ"が、"発達するんだ"の後ろに"な"(大平さんの書き込みも)が、それぞれ追加されています。
1文字ずつの微調整ですが、セリフを話し言葉としてより自然にするためのこだわりがこんなところにも。

11:04 叫び声は、台本上にはすべて「《叫ぶ》」とあるのみ。
後はすべて大平さんと堀さんによるアドリブ。

11:46 川から顔を出すホーマー、台本上に「《 》バート」とあるところ、《 》内に大平さんによって"ブワッ"と書き込まれています。
そして、11:57からのバートを呼ぶホーマーのセリフの上には、大平さんによって"水"と書き込まれています。

息遣い、咳等々、水中でのセリフには、熟練のテクニックが詰まっています。

11:20 吹き替え版2回目の"D'oh!"

こちらは、台本上には「《ドッ》」と書き入れられています。

12:31 ホーマーによるターザンの叫び声、台本上は何の指示もありませんが、サラッとこんな声量の叫び声、とんでもないです。

13:17 木の枝を手繰り寄せるホーマー、原語版では無音なので、台本にも手繰り寄せるセリフ指示はないのですが、大平さんによって"ヨイッ"と書き込まれ、最終的な音声では"ヨイショ"と、力いっぱいなホーマーが表現されています。

13:24 バートに何をしているのか聞かれるホーマー、台本上は「これで今日の晩飯を捕まえる」とあるところ、最後に大平さんによって"の"が追加されてます。

13:38 ウサギを吹っ飛ばしてしまい、ガッカリなホーマー、ここも原語版では無音なので、台本にも何もないところ、大平さんによって"アラ"と書き込まれ、ホーマーのドジな感じがより強調されています。

15:34 ガクガク震えながら眠るホーマーとバート
ここ、原語版では歯のカチカチ音だけでホーマーとバートは何も声を発していないのですが、台本の余白に大平さんによって"カカカ…"と書き込まれ、原語版のカチカチ音に加え、現場のアドリブで大平さんと堀さんによる震える声が重ねられています。

15:39 マギーと一緒に眠るグリズリー。
音声欄には「熊 《イビキ》」との記載、香盤表には「熊 富田耕生とあることから分かるように、ここのシーンの熊のイビキを、モンロー先生役の富田さんが吹き替えられています!
こういうところですら原音を流用しないこだわり!

・16:32 泥の川から出て来て叫ぶホーマー、台本上には「《イミ不明のわめき》」とあるのみ。
大平さんがイメージする、意味不明なわめき声、さすがです!

16:57 台本の、ホーマー「《イミ不明のわめき》」の上に、大平さんによって"別"と書き込まれており、後のアナウンサーのセリフと重なることから、別録りされたことが分かります。
また、欄外には叫び声のメモとして、"ガオガオ"の文字も。

18:10 記者の質問に対するマージのセリフ、台本上は「これは一体どういう事なの?どうしてそんな事きかれなくちゃ…」とあるところ、最終的な音声では「一体どういう事?どうしてそんな事きくの…」に変更されており、よりマージの動揺が伝わるセリフに。

18:37 アナウンサーからの質問、台本上は「旦那さんとの結婚生活は?野蛮?」と、原語版に忠実なセリフが書かれているところ、最終的な音声では「旦那さんとの結婚生活は?すごい?」と、いい感じに下世話な雰囲気になっています。

18:45 ホーマー「もう少しだよ」"よ"が大平さんによって消され、さらにバート「まだ着かない?」"着か"も消され、さらに"い""の"に変更されています。

セリフのキャッチボール感が気持ちいい!

・19:10 グリズリーと対面してしまい、バートからどうするか聞かれたホーマーのセリフ、台本上は「ヨイショだヨイショ!」とあるところ、最終的な音声では「ヨイショだヨイショするんだほら!」に変更され、焦ってる感じがより出ているセリフになっていますね。

19:29 引き続きヨイショを続けるホーマーのセリフ、「縁がありましたら又」の上に大平さんによって"ご"が書き加えられ、ホーマーのヨイショ感がよりアップ!

20:04 罠から逃げるホーマー、原語版ではうなり声のみですが、吹き替え版では大平さんのアドリブで「冗談じゃないぞ!」と追加されています。

20:24 麻酔銃がキマッたホーマーのセリフ、「仇を頼む 父の仇を…」の下に大平さんによって"ウーグーッ"との書き込みがあり、最終的な音声では大平さんによるパワフルな"イビキの吹き替え"になっています!

20:42 研究員にアップルソースをねだるホーマーのセリフ、「アップルソースちょうだよ」の上に、大平さんによって別録りを表す"別"のメモ書きがされています。
ここでもアナウンサーの声と重なるため、別録りになっていたようです。

21:23 ここも前の学者のセリフの声と重なることから、会社の連中に見られることを心配するホーマーのセリフの上にも"別"のメモ書き。
ちなみに、ホーマーのセリフが始まるとボリュームが下がる学者のセリフも「あれは人間じゃない外見を見れば分かります分からない人知性を疑いますよ私は」と、しっかり記載があります。

21:24 学者にバカにされるホーマーの怒りのセリフ、台本上には「ふざけンじゃないよ」とあるところ、その下に大平さんによって"コノォ"と書き込まれています。
大平さんのパワフルながなり声は、大平さんが担当されていた俳優の1人で、とても思い入れの強い役と語られていた、テリー・サバラスの豪快な吹き替えボイスを彷彿させます。

21:45 オチとなるマージのセリフ、原語版では"Oh, Homer. My brilliant beast.(オォ、ホーマー。私の華麗な獣)"とあるところ、吹き替え版では「気にしないの 私の知的なケダモノちゃん」に。

徐さんのおしゃれでかわいい翻訳と、マージの一城さんによる優しさ溢れる声が合わさって、最高のラストになっています!

・おまけ(今回のワンポイント)

Burger King kid’s meal toys "The Simpsons Camping set"(Homer)
シンプソンズ初のファストフード店のミールトイ。
1989年にアメリカのバーガーキングで、翌1990年にオーストラリアのハングリージャック(オーストラリア版のバーガーキング)で販売されたもので、本エピソードをモチーフにしたおもちゃです。

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当時のCMからも分かるように、販売時はソフビ人形に加えて、紙製の背景も付属していたのですが、キッズのおもちゃに"紙"はコレクターの世界では非常に危険な存在でして(笑)、今となっては背景もセットになっている状態ではほとんど市場に出てきません。