シンプソンズ・ファンクラブ・ブログ

「ザ・シンプソンズ」を日本で広めるために日本語吹替版のエピソードガイド、グッズを買えるお店の紹介、大平透さん使用のアフレコ台本の研究、等々を掲載しています。

大平さんのシンプソンズ台本:シーズン3、第13話「いたずらの代償(ツケ):Radio Bart」

シーズン3、第13話「いたずらの代償(ツケ):Radio Bart」January 9, 1992

(日本初放送:1933年12月11日、録音日:1993年9月2日)
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台本の表紙から分かるように、WOWOWではS3#11として放送されました。また、タイトル内の“代償”は“ツケ”と読ませてます。
ちなみに、WOWOWでの初回放送時には“スティングのゲスト出演エピソード”としてPRされたお話でもあります。



<以下、ネタバレになります>


【画面】(台本上の通信欄)

・01:21 踊るリサ

状況説明

・02:27 クインビーか?

公人がテレビCMに出ているからか、クインビー本人か疑問が残るため、現場への申し送りが。
最終的にはクインビー市長との判断となり、いつも通りに辻親八さんがキャスティングされています。

・02:43 シューキーパー 靴の保存型
ホーマーが去年バートにあげたプレゼントの解説

・05:28 7か8 “ホーマーのカクテルの話”でもムダ毛ぞりだったと思いますが違ったら統一して下さい

S3#10『エアロスミス登場:Flaming Moe's』(台本のナンバーリング的には#07)のこと。
全話通じて同じ翻訳家だからこそできる気づき、演出家をはじめ制作チームがワンチームだからこそできる細かな気配り。
良き時代のTV吹き替えのきめ細やかさがこういうところにも。
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・05:35 字幕「ダセエー」

バートがラベルメイカー本体に貼ったラベルの文字。
また、このシーン、原語版では無音で台本上に指示はありませんが、堀さんバートの声で「ダセエー」とも吹き込まれています。
気遣い溢れたTV吹き替えの世界。

・06:09 字幕「バートの財産」

・08:08 字幕「バートの財産」

・11:58 原音 6チャンネルのクラスティ

ケント・ブロックマンのセリフ中、吹き替えで省略した部分の説明。

・13:27 字幕「ティミーより長生きしたぞ」

・13:30 字幕「入場料2ドル」

・14:14 字幕「ティミーにささげる」

・14:32 字幕「井戸から中継」

・18:17 パジャマパーティ 前に登場

こちらもS3#10『エアロスミス登場:Flaming Moe's』のこと。
これも日本版の制作チームが全話共通だからこそできる気づき!

・19:11 字幕「リンカーンそっくりのリス発見」

・21:36 字幕「井戸に注意」



【音声】

・01:50 番組MCによる曲紹介

このMCが、71年から06年まで全米で放送された音楽番組『ソウル・トレイン』の71年~93年にMCを務めたドン・コーネリアスのパロディか?とのスタッフ側の注釈。
実際、シーズン3DVDコレクターズBOXのアル・ジーン氏による音声解説の中でそのとおりの内容が語られており、この予想は当たっていたわけです。
日本側のスタッフの教養、知識の幅広さも、こういうところから垣間見えます。

・01:55 今回のキーアイテムになる商品のCM
CMのナレーションはモンロー先生役の富田耕生さんが担当。
台本上「少年諸君 ラジオに出られても君はテレビを見るか?」とあるところ、最終的な音声では「少年諸君 ラジオに出られるのに君はテレビを見るか?」になっています。
変更前でも意味は伝わりますが、一瞬で言葉が入ってくるようにセリフ作りに手が尽くされているのがよく分かります。

・02:09 スーパースターマイクのCMを見たホーマー

台本上(原語版でも)「バートみたいだな(That could be Bart.)」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「バートにもできるぞ」になっています。
このあと、ホーマーがスーパースターマイクをバートに買い与える展開になるわけで、ホーマーが商品を気に入った様子を表現するため、オリジナルの意味からそこまで逸れないよう大平さんが脚色されていることが分かります。
今回も大平さん演出が輝きます!

・02:38 寝室でマージにバートへの誕生日プレゼントの相談をするホーマー

台本上「なあマージ 今年のプレゼントはバート喜ぶぞォ 去年あげたシュー・キーパーとは全然違う 棚に敷くシェルフペーパーともダンチ 究極のプレゼントだよ」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「なあマージ 今年のプレゼントはバート喜ぶぞォ 去年やったシュー・キーパーとは全然違う 棚に敷くシェルフペーパーともちがう 究極のプレゼントだよ」に。
大平さんが細かなセリフ運びまでくまなくチェックを入れられています。

・03:24 エイブじいちゃんからの電話をバートに伝えるマージ
台本上「バート お爺ちゃんから電話 誕生日おめでとうって」とあるところ、最終的な音声では「バート お爺ちゃんから電話 誕生日おめでとうって」になっています。
「誕生日」→「お誕生日」というちょっとした変更ですが、一城さんの優しいお芝居と相まって、より優しいママ・マージに仕上がっていますね。

・03:41 誕生日の無料券を消費するために大忙しのバート
台本上「バースデーシェイブ」とあるところ、最終的な音声では「バースデー顔そりサービスになっています。
当時のWOWOWの子供から大人まで幅広い世代に愛させる番組づくりの精神で、より分かりやすく日本語化されています。

・04:07 バートの誕生日パーティ

イタリアンファミレスにちなみ、台本にはバートのセリフを“マフィア風”にとの指示が。仕込みが細かい!
ちなみに、近年のお話、S32#15『ピザボットはエレキギターの夢を見るか?"Do Pizza Bots Dream of Electric Guitars"』にもこのレストランが登場していますね。
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・04:48 ロボットイタチ
スキナー校長役の青森伸さんの兼役。ここではバートを圧倒する存在。

・05:04 誕生日ソングを歌うロボット動物たち
台本上「君の誕生日 君の誕生日 君の誕生日だ ボク ワタシ」とあるところ、最終的な音声では語呂を重視して「君のバースデー 君のバースデー 君のバースデー ボク ワタシ」になっています。

・05:15 ピザを頬張るホーマー

台本上には何も指示がありませんが、大平さんが映像チェックした際に台本にしっかりメモをされた上、咀嚼音までしっかり吹き替えられています。

・06:05 バートにハンチング帽をプレゼントするマーティン
台本上「僕達も双子だね」とあるところ、最終的な音声ではこれで僕達も双子だ_になっています。
マーティンのちょっと上から目線な感じがよりよく表現されているセリフに。

・06:38 スーパースターマイクで熱唱するホーマー

こちらもしっかり大平さんホーマーによる吹き替えがされています。
声にエフェクトをかけるため別録りされたため、台本には「別」とのメモが。

・07:24 大平さんホーマーのドッ!2連発

2発目は強め!
このあたりの緩急の付け方も大平さんのテクニックが詰まってます。

・08:03 バートとフリかのような丁寧な約束するホーマー

台本上「悪いイタズラには絶対使わないって約束するか」とあるところ、大平さんによって手が加えられ語尾の「か」がカットされています。
ホーマーの口パクに合わせて現場でカットされたものと思われます。

・09:30 神の名を借りてロッドとトッドをだますバート

原語版で“Then quit flapping your lip, and make with the cookies!(直訳:それなら唇をパタパタさせないでクッキーを作れ)”とあるところ、翻訳家の徐賀世子さんの手にかかると「では文句たれずにクッキーを集めろ」になるわけです!徐さんが作り上げる、日本版シンプソンズの世界観すぎて素敵!

・09:45 バートのイタズラ開始

台本上にはバートのセリフ部分に<声を作って>との指示があります。

・10:08 ウィリーをバカにするバート
台本上は「バッカだぁー」とあるところ、最終的な音声では「バッカ_になっています。
よりシンプルに、堀さんバートの天下一品のいたずらっ子お芝居が炸裂しています!

・10:12 群衆に尋ねるホーマー

台本上「何かあったのか?」とあるところ、大平さんによって手が加えられヘイ何かあったのか?」になっています。
威勢よく話しかけるホーマーが、大平さんホーマーらしく元気いっぱいで最高です。

・10:50 部下から署長が入っては?と提案されるウィガム
台本上は原語版に忠実に「しかし私は・・・えらすぎる」とあるところ、最終的な音声では「しかし私は・・・すぎる」になっています。
ウィガム署長のより滑稽な感じが強調されていて良いですね。

・12:29 スティング登場!

吹き替え版ではウィガム署長役の中村大樹さんが担当。声の使い分けで同一人物には聞こえません!

・12:45 スティングの歌唱シーン

本人の歌声を聴かせるため、WOWOWでも吹き替えはされず、字幕対応となりました。
仮に吹き替えされるにしても、翻訳せずオリジナルの発音で収録しようとしていたことが台本から分かります。

・13:19 印税の使い道を尋ねられたクラスティ
台本上「プロモーション 積み出し配給の支払いが結構するからね」とあるところ、最終的な音声では「プロモーション CD制作の支払いが結構高いからになっています。
こちらも幅広い世代の視聴者への分かりやすさファーストが前面に出ている変更ですね。

・14:26 速報を伝えるケント・ブロックマン
台本上「ちょっと前井戸に落ちたティミー君の容態が急変したらしいとの情報が入りました」とあるところ、最終的な音声では「ちょっと前井戸に落ちたティミー君の容態が急変したらしいとの情報が入りました」に。
より速報感を出すため、現場で追加されたようです。

・16:50 井戸の底から叫ぶバート
ぜひ原語版と聴き比べていただきたいのですが、堀さんバートのシャウトがとにかく力強く、迫真の演技です!!

・16:56 警察と話すホーマー

台本上「私らを最低の親だと思ってるんでしょう」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「私らを最低の親だと思ってるんでしょうネェになっています。
ここのセリフ運びとテンポ感は、さすがとしか言いようがありません。

・17:15 ホーマーを罵倒するバート

台本上「痛いだろ ハゲデブ親父!」とあるところ、最終的な音声では「痛いだろ _デブッチョ親父!」になっています。
日本版シンプソンズ立ち上げ当初の台本(S1#2『バートは天才?::Bart the Genius』)からも分かるように、当時のWOWOWでは“ハゲ”というワードの使用に慎重でした。
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・17:23 ティミーくん推し老女
パティ役の鈴木れい子さんが兼役で担当されている今回だけのキャラ。やはり老女役といえば、鈴木さん!!
台本上「前の子の方がよかったわ 行儀よくて」とあるところ、最終的な音声では「前の子の方がよかったわ 行儀よくて」になっています。
こちらもちょっとした追加ですが、結果口パクぴったりに!

・18:55 大衆の声を総括したクインビー市長

原語版では“I say let him stay down there.(直訳:そこにいさせよう!)”とあるところ、徐さんによって翻訳されると「バート君 君は井戸に住め!」になります!
これもまた最高(笑)

・19:24 ベクトルの違う励まし方をするホーマー

台本上「大丈夫すぐ成長する」とあるところ、大平さんによって手が加えられ「大丈夫すぐ成長するってになっています。
おちゃらけで能天気な日本版ホーマーを、大平さんが見事に演出されます。

・19:38 後悔を語るバート

原語版では“Shave a swear word in my hair...(直訳:髪に汚いことばを剃って…)”、台本上は「頭に血文字のソリ入れたり」とあるところ、最終的な音声では卑猥な言葉のソリ入れたり」になっています。
演者さんやスタッフの皆さんが収録の段階までベストな表現を探られていたことがよく伝わる部分ですね。

・20:01 イケメンウィリー

ここから彼の新たな一面が…
スミサーズやラブジョイ牧師といった低体温系のメンズを多く担当されている目黒光祐さんによる熱(苦しい)い漢のお芝居にも注目です!

・20:29 今回はストーリーテラー的な役割のジャスパー
台本上「シャベルで穴堀りをするんだと 南北戦争の頃のように」とあるところ、最終的な音声では「シャベルで穴堀りをするんだと 南北戦争の頃のようにになっています。
ジャスパーといえば、スキナー校長の青森伸さんがシリーズ通してずっと担当されていましたが、改めて青森さんの幅広さが分かるキャラだと強く思います。
ちなみに、本エピソードでは青森さんが4キャラやられています(スキナー校長、ヒバート先生、ジャスパー、ロボットイタチ)

・21:21 両親と再会するバート
原語版では“Mom! Dad!”、台本上「ママ!パパ!」とあるところ、最終的な音声では「ママ!親父!」になっています。
こういう気づきもスタッフがしっかりチェックしているからこそです。
(ちなみに、各キャラのホーマーの呼び方は…マージ→ホーマー、バート→親父、リサ→パパ、です。)

・21:29 バートに声をかけるホーマー
台本上「心配するな2度と子供が井戸に落ちないようちゃんと手段を講じるから」とあるところ、最終的な音声では「心配するな2度と子供が井戸に落ちないようちゃんと手段を講じるから」になっています。
細かな部分までのこだわりはもちろん、いつもよりちょっと頼もしいホーマーのお芝居は、さすが大平さんです。