シンプソンズ・ファンクラブ・ブログ

「ザ・シンプソンズ」を日本で広めるために日本語吹替版のエピソードガイド、グッズを買えるお店の紹介、大平透さん使用のアフレコ台本の研究、等々を掲載しています。

大平さんのシンプソンズ台本:シーズン2「落第バート:Bart Gets an F」

シーズン2、第1話「落第バート:Bart Gets an F」October 11, 1990(日本初回放送:1992年11月14日、録音日:1992年10月15日)

本国ではシーズン2の第1話ですが、日本(WOWOW)ではシーズン2の第3話(シーズン1:13話+シーズン2:3話=第16話)として放送されました。
また、表紙からも分かるように、アフレコ時には邦題が未定であったようです。
simpsons333.hatenablog.com
なお、WOWOWでは、シーズン1とシーズン2は間をあけることなく放送されたことから、吹き替え収録もシーズン1から間髪入れずに行われました。

シーズン1の勢いそのままに、大平さんをはじめとするレジェンド吹き替えキャストと、吹き替え演出のパイオニア:春日正伸ディレクターからバトンを受け取ったご子息の春日一伸ディレクター(一部、春日正伸Dが続投されているエピソードもあります)、大平さんが絶賛した翻訳家の徐賀世子さん、その他熱い熱い日本語版スタッフの皆さんの手による、シーズン2に突入します!!


<以下、ネタバレになります>


【画面】(台本上の通信欄)

01:30 字幕「アーネスト・ヘミングウェイの午後」

03:35 ゲームセンター
状況説明。

04:36 (オーバーに)
リサのテストを見たホーマーのセリフに対する指示。

15:19 ゲーセン ゲームセンター 最近の小学生はゲーセンとしか言わないようです

マーティンのセリフに使用されている"ゲーセン"というワードの解説。
今や日本語としてすっかり定着している言葉ですが、その言葉の出始めの資料として貴重ですし、何より歴史を感じます!

18:46 クリスマスソング集からとりました
ウィンター・ワンダーランドの訳詞のことと思われます。


【音声】

01:54 マーティン「ヘミングウェイと呼んでください」
クラバーペル先生から絶賛されたマーティンが発するセリフですが、原語版では"Oh, Please, call me Papa."とあることから、台本上にも「パパと呼んで下さい」とあります。
パパは、ヘミングウェイの愛称で、本国ではお馴染みの表現なのですが、日本の子供から大人まで幅広い層を対象にしていた"テレビ吹き替え"の日本版シンプソンズは、とにかく視聴者ファーストなので、現場で"パパ""ヘミングウェイ"と変更されたようです。

03:19 クラバーペル先生「それにああでもない(し) こうでもない…」

思考停止中のバートに聞こえるクラバーペル先生の声、原語版では海外ドラマや映画等でお馴染みの表現"Blah blah blah..."であるところ、吹き替え版ではこの表現。
この際の"Blah"は単独では特に意味を持たないので、シーンによってどういうワードを当てはめるのかというところだと思うのですが、今回も翻訳家の徐さんのセンスさく裂です!

04:36 画面欄に(オーバーに)と指示がついている、リサのテスト結果を受けてのホーマーのリアクション。

台本上は、大平さんによってこのように処理されています。
("オフの手"のメモ書きは、リサからテストを受け取るホーマーの顔が映っていない(=オフ)ことから)

05:14 キングコングで号泣するホーマー

台本上は《 》があるのみですが、大平さんによって"ド ハハ…泣"と書き込みがあります。
ホーマーの"D'oh!"をアレンジしたような、大平さんオリジナルの泣き方は、かなり力強いです!
また、この後の笑い声、"ヘヘヘ…"は、前にも書きましたが、特に本国のダン・カステラネタ氏のそれにそっくり!

05:59 ホーマー「アタマ悪いんだろうなぁ…」

「どうしていつも赤点なのかしら」と不思議がるマージに対してのホーマーのセリフ。
台本上は「頭が悪いんだろうなぁ…」なのですが、大平さんによって"が"がカットされたことで、テンポがアップし、またそれまでの温かいゆったりとした声から低めの声にガラッと変えることで、より笑えるシーンに。
子供に対してちょっとひどいことを言うシーンが、なんだか憎めない、よりホーマーらしさが演出されているシーンになっているように感じます。

08:28 ホーマー「俺も病気になりたいよもう!」

2階にテレビを運ぶホーマーのセリフ、台本上は「俺も病気になりたいよ」だけなのですが、大平さんによって語尾に「もう!」が追加されています。
また、重いものを運ぶ演技のための、"ハコブ"のメモ書きも。

09:42 プライヤー先生「ああでもないし こうでもない…」
原語版では先に登場したセリフ同様に"Blah blah blah…"ですが、台本には「あれこれあれこれ ペラペラペラ」とあるため、バートとクラバーペル先生の反省文シーンと対応(いわゆる天丼)させるため、現場で「ああでもないし こうでもない…」に変更されたようです。

10:49 ホーマー「とれなかったらクラスで一番年上になれるじゃん」

どうしてもダブりたくない半べそのバートに大ボケをかますホーマーのセリフ、台本上は「とれなかったらクラスで一番年上になれるじゃないか」とあるところ、大平さんによって"ないか"が消され、"ん"と書き換えられています。
ちょっとした言い方の変更ですが、ホーマーのおバカ感アップに繋がっているように思いませんか?

14:09からのバートとマーティンがお互いに教えあうシーンは、台本上はすべてご覧の通り。

2人の息遣いやリアクションの吹き替えはすべてアドリブってわけです!

16:55 ビル「昨日は雪女と雪男のケンカでもあったのか積もってるねェー」
原語版では、"And it looks like we've got some snow-formation for all those flake-lovers out there.(直訳:雪が好きな人には堪らない雪像もあるようです)"なので、意訳であるわけですが、視聴者のための分かりやすい状況説明と、お茶目なビルとマーティのキャラクターを演出するためのものと思われます。
時代的にこういう"テレビ吹き替え"アレンジはほぼできなくなっているようですが、やっぱり日本語吹き替えの醍醐味であったり、楽しみの1つでありますよね。

18:06からの雪で遊ぶ住民たちのセリフは、台本ではこんな感じ。

つまり、ここもアドリブ!

18:32 ホーマー「イテーッ」

スミサーズが投げた雪が命中したホーマーのセリフなのですが、ここは原語版では無音。
台本は、大平さんによってセリフ自体が書き込まれています。
そう!ここも大平さんによる完全アドリブ!さすがです!!

18:46 ウィンター・ワンダーランドを合唱する住民たち

耳コピで楽譜を起こせるスタッフさんがいたり、歌のみ別日に収録することもあった日本版シンプソンズ
熱心な練習の末、歌の録音に使用していたテープが焼き切れたという伝説的エピソードもあるほど、歌のシーンにもとんでもない力が入れられていたそうです。
今のように良さげなテイクの良さげな部分をつなぎ合わせて"上手い風"に聴かせる技術も当時はほとんど使われなかったわけですが、バートの堀さん、マージの一城さん、リサの神代さんといったバリバリに歌える皆さんが揃っていることもあり、とんでもない完成度です!!

20:45からの堀さんによるバートの泣きのお芝居、改めて書くまでもないのですが、やっぱり凄いです!!