シンプソンズ・ファンクラブ・ブログ

「ザ・シンプソンズ」を日本で広めるために日本語吹替版のエピソードガイド、グッズを買えるお店の紹介、大平透さん使用のアフレコ台本の研究、等々を掲載しています。

シンプソンズ日本上陸30周年記念企画!「シンプソンズとWOWOW」

1990年11月開局、1991年4月に本放送が開始された衛星放送局:WOWOW(日本初の有料衛星放送局)黎明期のキラーコンテンツの1つとして、1992年9月19日(土)に放送が開始され、日本上陸を果たした「ザ・シンプソンズ
今年はその日本上陸から30周年という記念すべき年ですので、30周年企画としてネット上にはほぼ残っていない情報をTwitter等にも掲載していきます。


30周年記念企画のブログ記事としては、やはりWOWOWについて語らないわけにはいきません!ということで、シンプソンズWOWOWと題してお送りいたします。

WOWOW MONTHLY PROGRAM GUIDE 1992年 9,10月号)

ザ・シンプソンズ」は、本国で大ヒットを飛ばして話題になっていたこともあり、当初は地上波放送も計画されていたそうですが、最終的には当時「ツイン・ピークス」を日本に紹介して大旋風を巻き起こし、早くも加入者数100万人を突破していたWOWOWが放送権を取得し、1992年9月19日(土)から毎週土日のノンスクランブル(無料放送)帯に、シーズン1、シーズン2と立て続けに放送しました。

20世紀FOXホームビデオ(当時)の販促チラシ)

局の目玉番組の1つとして、有料放送局なのにあえてのノンスクランブル帯に放送していたところに、とにかく日本でシンプソンズを広めよう、というWOWOW側の熱い思いを感じます。


WOWOW MONTHLY PROGRAM GUIDE 1992年 9月号)


WOWOW MONTHLY PROGRAM GUIDE 1992年10月号)

そして、WOWOWでのシンプソンズの放送を語る上で欠かせないのが、日本語吹き替え版について。

WOWOWの元プロデューサー:橘田寿宏氏(シーズン7~9担当)は、第1回シンプソンズファン感謝祭のステージにご登壇いただいた際、シンプソンズアメリカでの評判が非常に高かったので、『クオリティの高いアニメーションを目指そう!』として、有り得ないくらい、大平透さんをはじめとした一流声優さんたちに参加して頂きました。逆に私たち制作者としては、これだけの声優さん方に出演していただいて、変な作品は作れないということで、本当に緊張感を持って制作しました」と語られ、ホーマー役の大平透も放送当時のインタビューや我々がお話を伺った際に「最近は、若手がほとんでベテランは少しだけの番組が多い中、シンプソンズは脇まで全ての声優がプロフェッショナルで、他の番組では主役を張ってるレベルのキャストが揃っている」と語られていました。

また、当時の制作関係者の方から伺ったところによると、日本版シンプソンズ立ち上げ時のキャストには、“ジュニアランク”の新人声優は誰もおらず、全員がいわゆる“ランカー”の出演者であり、声のお芝居の歴史と共に歩んできた大御所を筆頭に、中堅以上のベテランの方々で固められており、他の誰も真似できないような豪華な吹き替え版であったとのことです。
simpsons333.hatenablog.com


(シーズン6「ライバルはウィノナ・ライダー」(WOWOW放送時にはシーズン5として放送)収録後のファミリー声優のみなさん)

吹き替えの演出(ディレクター)には、テレビ放送の創成期から活躍された、外画吹き替えの名ディレクター:春日正伸氏
TV映画の吹き替えを中心に、半世紀に渡り数多くの作品に携わられ、今ではすっかりお馴染みのジャッキー・チェンの声に石丸博也氏(シンプソンズではライオネルハーツ弁護士役他でご出演)をキャスティングされたことや、テレビ朝日日曜洋画劇場」やフジテレビ「ゴールデン洋画劇場」等で数々の名吹き替えを世に送り出されたことで有名です。

そんな春日氏によって日本版シンプソンズのキャスティグが行われ、ホーマー役の大平透氏のみ、この役には大平さんしかいない!という春日氏の思いでオーディションなしの指名で配役され、他のキャストについても、春日氏が声優界の女神様と呼んでいた堀絢子氏(バート役)、同じく声優界の神様と呼んでいた滝口順平氏(エイブじいちゃん役)をはじめとした、春日氏が心から信頼するあり得ないほどの豪華キャストが配役されました。

そして、吹き替え翻訳には、近年では戯曲の翻訳でも大活躍されている、徐賀世子
海外ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」「宇宙船レッドドワーフ号」「恐竜家族」をはじめ、数々のテレビシリーズ、映画作品での躍動感のあるユーモア溢れる翻訳が人気で、ホーマー役の大平さんも絶賛されていた、吹き替え翻訳の達人!
その他、熟練スタッフに、制作会社、やる気満々のWOWOWの方々が集結して、日本版シンプソンズが立ち上げられたわけなのです!!

(補足しますと、シンプソンズに限らず、テレビ吹き替え作品は権利元ではなく、それを放送する(=放送権を取得した)テレビ局が制作するものでした。そのため、シンプソンズに関しては、WOWOW主導で吹き替えが制作されたのです。)


続いて、番組の構成について。
番組冒頭には日本語版タイトルロゴ、カウチギャグ後の導入部(後になってカウチギャグ直後のテレビ画面に表示されるようになります)には邦題が表示されていました。

そして、番組のエンディングには、当時のTV吹き替えにはお馴染みの形式のスタッフクレジット。




オリジナルのクリエーターの名前が表示され、その後に吹き替えキャスト、制作スタッフと順番に表示されていました。
こういう形式のエンドロールは、どなたが何の役をやっているのか分かるので、意外な発見があって楽しいところです。

さらに、あらすじナレーション付きの次回予告。


マージ役の一城みゆ希さん、リサ役の神代知衣さん(バート役の堀絢子さんが担当された回もあります)が交代で、お馴染みのキャラの声で「サザエさん」よろしく次回のあらすじをナレーションされていました。
あらすじが、「○○で、さぁ大変!」で締められることが多く、シンプソンズは大変なことが多いな、と楽しんで見ていたものです。笑

本編の吹き替え以外のところにも、上記をはじめとした数々の工夫がされており、“日本版シンプソンズ”として視聴者を楽しませてくれる数多くの仕掛けが施されていました。

WOWOW MONTHLY PROGRAM GUIDE 1992年11月号)


WOWOW MONTHLY PROGRAM GUIDE 1992年12月号)

上記のWOWOWの放送素材が、全国のローカル局への番組販売にも使用されたため、WOWOW加入者以外にも目にした機会が多いかと思われます。
以前、全国のファンを対象に行った調査で、“はじめてのシンプソンズ”が各地方ローカル局の放送だった、という回答が予想以上に多く、改めて地上波の力、そして何よりWOWOWが作った“日本版シンプソンズ”の力を感じたものです。

こうして、万全の態勢でWOWOWでのテレビ放送が始まったシンプソンズ

シンプソンズWOWOWさんの手を離れて随分と時間が経過しましたが、WOWOWさん(そして、それに関わったすべての人たち)がシンプソンズに注いだ愛は作品の中でいつまでも色褪せることなく輝き続けていきます!!


以下、2022年中に不定期に更新予定のシンプソンズ日本上陸30周年にまつわるツイートを追記していきます。