ステージの上手でファンに対してひとり、ひとり挨拶をしていく大平さん。一方、ステージの中央では次なるサプライズゲストの登場を待っていた。
一城さん
「ここで、とっても素敵なゲストの方を紹介したいと思います。シンプソンズを日本のテレビで初めて放送いたしましたWOWOW放送局の元プロデューサー、現在はアミューズソフトエンタテイメント株式会社取締役企画制作本部長の橘田寿宏プロデューサーです!」
ラテン調のシンプソンズのテーマソングと共に観客席から橘田さんがステージへと登場する。
一城さん
「橘田さんは、今日、お仕事が入っていたのにスケジュールを調整して駆けつけてくださいました。どうぞ、シンプソンズファンの皆さまに一言、ご挨拶をお願い致します。」
橘田さん
「ご紹介いただきました、橘田と申します。今日は本当にこのようなステキな会に参加させていただき、ありがとうございます。」
客席から大きな拍手が起こる。WOWOWといえば、日本のシンプソンズの歴史の始まりである。そのプロデューサーと言えば日本のシンプソンズの父といっても過言ではない人なのである。
WOWOWでは-1992年〜2002年までの10年間シンプソンズを放送しており、最初はクリスさんというアメリカの方が関わっていて、その間、何人かプロデューサーが代わり、橘田さんはその中でも最長期間の1995年から6年間シンプソンズのプロデューサーを務められたそうである。
橘田さんには声優さんですら知らない、制作サイドの苦労や楽しいことなど、とても貴重なエピソードを語ってくれたのでした。
橘田さん
「シンプソンズというアニメーションは、アメリカで1987年にある番組(トレーシー・ウルマンショー)のコーナー企画としてスタートしました。
(トレーシーウルマンショー時代の絵!)
1989年からシリーズで放送していて、その3年後(1992年)からWOWOWで放送開始しました。
アメリカの評判が非常に高かったので『クオリティーの高いアニメーションを目指そう!』として、「あり得ない!」というくらい、大平透さんをはじめとした一流の声優さんに参加をして頂きました。逆に私たち制作者としては、これだけの声優さん方に出演していただいて、変な作品は作れないということで、本当に緊張感を持って制作をしました。」
会場のシンプソンズファンはシンプソンズに掛ける橘田さんの想いを興味深く聞いている。そして、橘田さんから驚きのエピソードを聞かせていただくのだった!!
橘田さん
「アフレコというのは、ずっとシリーズを翻訳してくれている徐 賀世子さんが訳して、それを製本して、セリフのチェックをして問題がなければアフレコの当日を迎えるのが普通形式なのですが、シンプソンズはですね、アフレコの3〜4日前に演出の向山宏志さんと私(橘田さん)の二人で、じつは、アタマ(最初)から声をあてていたんです。」
一城さん
「え?!ふたりで?!!知らなかった!!!」
島田さんも驚いている!!
橘田さん
「声を実際にあててみて、これが本当にニュアンスが伝わるかどうかを全部チェックしてみて、それで、全部の言葉を直して、アフレコをしてもらっていたんです。毎週です。」
「おお〜!!」一城さん、島田さんを含む会場中の全員が驚きの声をあげ、そして大きな感謝の拍手が湧き起こる!!
橘田さん
「多分、そういうことをやったのはシンプソンズだけだと思います。多分、今でもそういうことをやっているところは無いと思います。それぐらいシンプソンズに関して制作サイドはみんな気を使っていたし、いい作品を送りたいと思って作っていました。」
一城さん
「その賜物で、こんなに素晴らしいファンの方々がついてくださったんですね!」
橘田さんは嬉しそうに微笑む。
橘田さん
「今日はお仕事の関係でいらっしゃっていませんけれども、それに付き合っていただいた演出の向山さんに非常に感謝しております。」
一城さん
「島田さん、今の言葉でわたし、すごい感動しちゃったんですけれども!!」
島田さん
「(驚き)ええ!本当に知らなかったですもんね!!」
一城さん
「(橘田さん)それってもしかして、ひとり、ひとりのキャラクターでやってました?」
橘田さん
「いえ、そこまでは(笑い)」
一城さん
「だれか、できるキャラクターなんてありますか?」
橘田さん
「私がですか?いえいえ、それはないですよ〜(笑い)」
突然、一城さんがマージに変身!
マージ
「正直に言ってごらん!!一番好きなキャラクターは誰だい?!」
橘田さん
「ユニークなキャラクターがたくさんいるので、一番好きなキャラクターって、なかなか難しいですが、僕は個人的には「レニー」や「アープー」が好きです」
さすが、元プロデューサー!!通好みのチョイスである!!
マニアックな回答に一城さん、上機嫌!
一城さん
「ほんとうに不思議なキャラクターですよね〜」
どこにも書いていない貴重なエピソードに客席のファンは夢中になっている。そして、さらに貴重な話しが続く
一城さん
「アレって(シンプソンズのキャスティングは)最初、オーディションだったんですよ。
それで、私ね、思い出話をいいますとね、マージのオーディションをはじめて受けた時にいっぺんで気に入っちゃったんですよ!!
当時のマネージャー(現:社長)に『あの役!ど〜してもやりたい!!ど〜してもやりたい!!』ってずーっと会うたんびに言っていて、「一城さん!!決まったわよ〜!!」って夜中に電話が掛かってきたんですよ!どうして夜中なんだかわからないですけれども(笑い)、それでお家の中で夜中なのに万歳三唱したのを覚えています!(それくらい好きなんですね)」
会場からは一城さん=マージの誕生秘話に拍手が起こる!!.
一城さん
「島田さんもオーディション?大平さん以外は全員オーディションだったとおもうんですけど?」
島田さん
「(当時)テンション上げすぎて、誰の役かはっきりしないけれど、一つの役だけじゃなかったですね。」
島田さんはクラスティーの他にもトロイマクルアー役も演じている。
島田さん
「本日、音響監督の向山さんはお仕事の都合でご来場できず、翻訳家の徐さんも一生懸命スケジュールを調整してくれていたのですが、どうしても都合がつかずご来場できませんでしたが「ファンの皆さまにくれぐれもよろしくお伝えください」とメッセージを頂いております。」
一城さん
「(橘田さんに)今は違うところで益々ご活躍なさっていますが、これからもシンプソンズを昔と同じように可愛がっていただけたらと想います。本日はお忙しい中、ありがとうございました。」
一城さん、島田さんが橘田さんに感謝の言葉を述べる。
我々、日本のファンにシンプソンズを伝えるために、陰ながら全力を注いできてくれた橘田さんに会場のシンプソンズファンから大きな拍手が起こる。
橘田さんから打ち明けられる数々の制作秘話に、ファンである私達は、いい作品には作り手の愛や想いが込められていること、そして、大平さんや一城さんをはじめ、声優の皆さんが本当にキャラクターを愛しているからこそシンプソンズがここまでいい作品になったことが分かり、今まで以上にシンプソンズに対して愛情を感じるようになったのではないでしょうか?