シンプソンズ・ファンクラブ・ブログ

「ザ・シンプソンズ」を日本で広めるために日本語吹替版のエピソードガイド、グッズを買えるお店の紹介、大平透さん使用のアフレコ台本の研究、等々を掲載しています。

大平さんのシンプソンズ台本:シーズン1「忘れられた英雄」

シーズン1、第8話「忘れられた英雄:The Telltale Head」February 25, 1990(日本初回放送:1992年10月10日、録音日:1992年9月17日)

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本国では第8話として放送されたエピソードですが、日本(WOWOW)では表紙のナンバリングからも分かるように、第7話として放送されました。
また、邦題が印刷されていないことから、台本製本時にはタイトルが未定であったようです。


<以下、ネタバレになります>


【画面】(台本上の通信欄)

03:38 アナウンサー①「さあー今日は絶好調ですフィリップス ドーピングの噂をふきとばすような快挙でした 見事なタッチダウン
ファミリーのセリフとかぶるため、アナウンサー①のセリフは画面欄に。

04:49 「今日は絶好調ですレビン選手、最近体力をたくわえる為、試合前日は禁欲していると話していましたがそれが良かったのでしょう」
アナウンサー①の実況の続き

10:24 クイックEマート
場面展開の説明

12:45 カーニー ドルフ 《ガヤ》「愛してるわジェバダイア、キスして、強い人大好き」
バートとジンボのセリフにかぶさる形でのカーニーとドルフのガヤが指示されています。

14:48 バート像の首を切る
場面説明

15:53 リポーター(ガヤ)「犯人の心当たりは目撃者はいないんですか どういう目的か分かってないんですか 犯行声明文が送られてくる可能性が?」
ウィガム署長のセリフの後ろに流れている記者たちのセリフ、音声ではだいぶボリュームが絞られていますが、画面欄にはこうやってしっかりと記載されています。

16:50 字幕「スプリングフィールド老人ホーム」

・19:40 「とはいっても熊が人を殺すのは当然すぎるほど当然の話です この事はスプリングフィールドのイメージダウンとしてとらえられるよりいかに彼が強かったかを象徴する一つのたとえ話としてとらえるべきだと私は思います 何よりスプリングフィールドはこの町を創設したフロンティアです
強靭な肉体、精神、実行力、そのどれが欠けても彼の偉業は果たせなかったでしょう 我々はスプリングフィールドのすばらしさを疑うべきではありません…」

バートの告白の後ろから聞こえてくるアナウンサー③の声も画面欄に。


【音声】
・01:31 冒頭のホーマーのセリフ、「なあバート 父さんも子供の頃 よくバカな事をして人を怒らせた」の後が、台本上は「でも人ってもんは意外に寛大だ 心からすまないと謝れば許す心は誰にでも…」とあるところ、大平さんの修正により「でも人って意外に寛大だから謝れば許す心は誰にでも…」と、時間に収まるように変更されています(20:19のセリフと統一を図るためでもあります)。
また、そのセリフの後に、アドリブで「アラ!?」と追加されています。

02:08 逃げるように勧めるバートに対するホーマーのセリフ「バート そうしたいのはヤマヤマだ でもな二人でやった事だ…」の中の、"でもな""な"が大平さんによって消されています。
また、"でも"点々をつけて強調していることから、セリフ全体を通して"でも"に重きを置いて、バランスをとっていることが分かります。
ただの一文としてダーッと読み上げるのではなく、一文の中に高低差をつけてセリフに深みを持たせる、大ベテランならではのテクニックです。

02:19 2人を追いかけるラブジョイ牧師のセリフ、台本上は「いたぞ逃がすな!」となっているところ、最終的な音声では牧師設定を尊重した「いましたぞ 逃がさないで」と、ちょっとマイルドな表現に変更されています。

03:21 アメフトの中継を観ているホーマーのセリフ、「つかまえろ!つかまえろ!」の前に、大平さんによって「そこだ!」と書き込まれ、大声を張り上げて、必死なホーマーを演出されています。

06:06 アナウンサー①のセリフが台本上は、原語版に近い「さあー決定のキックのウイニングアップ 残り時間は後わずか」とあるところ、最終的な音声は「さあー最後のキックのタイムアップまで残り時間は後わずか」と、アメフトにちょっと馴染みが薄い日本人のために分かりやすい表現に変更されています。
こういう心遣いからも、愛を持って制作されていたことがよく分かりますね!

06:28 勝利の叫び「やったー」をごまかすホーマー「やった…やったらいいお話」の部分、大平さんの台本ではこう処理されていました。

ちなみに、ここのセリフは、原語版では"It's good."をごまかすため、"It's...good to see you all in church.(直訳:それは…みなさんに教会でお会いできてよかったです)"とするものなのですが、翻訳家の徐さんのお見事な吹き替え翻訳に加え、大平さんの腕により、言葉遊びのジョークが日本語としてのセリフとして自然に、かつここまで面白くなっているのです。

07:41 サルが天国に行けないと聞いたホーマーのセリフ、台本上は「ジャングルにいる獰猛なサルはともかく まるで人間のように葉マキを吸ったり ローラースケートをするサルならいいじゃないか 面白い芸だって見られるし」とあるところ、時間の都合からか"面白い芸…"からがカットされていますが、その代わりに"いいじゃないか"の後ろに大平さんによって"よな"と書き込まれ、この"よな"というたった2文字の追加と大平さんのテクニックによって、セリフの余韻がアップしているから驚きです。

08:08 5ドルをおねだりされたホーマーのセリフ、大平さんは台本上にこのような処理をされていました。

先ほどの"でも"同様、セリフの中に高低差をつけた、しびれるセリフ回しです!

15:20 ボウリンググッズのカタログを読んでいるホーマーのセリフ、台本上は「見てみろコレ 雷神のハンマー ピンをバルハラへ送ります "バルハラ"…?リサ?」とあり、"雷神のハンマー"の後ろに"!"と、"バルハラ"の後ろに"ッて?"と、それぞれ大平さんによって書き込まれています。
このように、セリフの微妙なニュアンスの微調整まで抜かりありません!

18:31 セリフありで初登場のクラスティ
同業者の方から、普通はあのクラスティの声の出し方をすると喉を潰すと評される島田敏さんによる、初登場から仕上がりに仕上がったクラスティボイス!

20:19 冒頭(01:31)のシーンが再度登場。
音声については、再利用ではなく、大平さんが再度吹き込まれています。

20:50 群衆に演説するバートのセリフ、台本上は「でも一つ言わせてもらうなら 僕が銅像の頭を取って初めて みんな過去から受け継いできた…」とあるところ、最終的な音声では"みんな"部分が"みなさんは"に変更されています。
バートのセリフをより丁寧にするためのワンポイント修正。

20:19 ホーマーを呼びかけるバートのセリフ、台本上は原語版の"Dad"に忠実に「パパ」になっていますが、大平さんによって"オヤジ"に書き換えられています。
本エピソードではホーマーにちょっと甘えるバートを演出するために、いつもとは違う"パパ呼び"が効果的に使用されているようでしたが、ここではいつものバートが戻って来たシーンを演出するためか、現場で大平さんたちの手によっていつもの"オヤジ"に変更されたようです。
また、その後、バートに銅像の頭を渡すホーマーは原語版では無音ですが、ちょっと口が動いているようにも見えるため、大平さんが台本に「アイヨ」と書き込まれており、最終的な音声にも反映されています。
ちょっと強がった可愛げ溢れる堀さんバートの「オヤジ」に、息子に優しく語り掛けるような、温かみのある大平さんホーマーの「アイヨ」、最高です!

21:30 どさくさに紛れて、マッチング成功の2人。