シンプソンズ・ファンクラブ・ブログ

「ザ・シンプソンズ」を日本で広めるために日本語吹替版のエピソードガイド、グッズを買えるお店の紹介、大平透さん使用のアフレコ台本の研究、等々を掲載しています。

大平さんのシンプソンズ台本:シーズン1「シンプソン家のクリスマス」

シーズン1「シンプソン家のクリスマス:Simpsons Roasting on an Open Fire(The Simpsons Christmas Special)」December 17, 1989
(日本初回放送:1992年10月11日、録音日:1992年9月24日←大平さん63回目の誕生日)
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表紙にナンバリングされているように、シーズン1の第8話(本国では第1話)として放送されました。


<以下、ネタバレになります>
【画面】(台本上の通信欄)

00:16 字幕「クリスマス発表会」(Christmas Pagent)

00:55 (#5、#6に登場のジャニー、ジェイニーに変更です 混乱させてすみません)
ドイツのサンタを紹介するジェイニー(後に黒人少女に変更)の登場シーンに書かれています。このように初期シーズンでは、キャラ名に途中で修正がかかっていることも。

09:25 ホーマーの愛の言葉(音声の項目参照)の第2案として、「俺の財布は分厚くないしクレジットは使用不可になってるけど、でも心から愛してるよ」と記載されています。画面欄のこの第2案が大平さんの手で修正されており、最終的には音声欄のものではなく、こちらのセリフが採用されています。

13:07 ツリー販売の看板の字幕「どれでも75ドル」、「1本60ドルより」、「少々ふぞろい45ドル」、「立ち入り禁止」

16:25 クリスマスの奇跡について語るバートのシーン、「原音 タイニーティムもそうだしチャーリーブラウンもそうだし」と記載され、マッチ売りの少女が日本版アレンジで付け加えられていることが分かります。
なお、この後のシーン、原音ではホーマーが、チャールズ・ディケンズの「クリスマス・キャロル」の登場人物:タイニー・ティムを知らないというジョークが出てきますが、日本人の視聴者的にホーマーじゃなくてもタイニー・ティムに馴染みが薄いことから、原音ではホーマーが拾わなかった、スマーフスマーフ君)を知らないというジョークに変えられています。
(80年代に日本でもアニメ版が放送されています)

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18:36 リサの反論の第2案が記載されており、こちらが実際に採用されたセリフです。
「それは、やめてほしいわ この世に欠点のない人間なんて存在しないし 第一私にとってはたった一人の父親よ。娘にとって父親は男性の見本であり、その父親をどう評価するかで今後の人間関係のあり方が決定づけられるのよ パパの悪口を言うという事はすなわち私の将来に悪影響を及ぼすということだけど おばさんは何もそうする事(※音声では、ここが"それを"になっています)を望んでるわけではないでしょ?」

19:39 ホーマーとバートの声援の後ろで続く、聞こえるか聞こえないかの音量の実況音声のセリフが、しっかりと画面欄に。
「クラブハウスターン ワールウィンド ダントツトップです 後ろを必死で追うクウアドラプド しかし依然ワールウィンドがリード "チューマイシュー"も追いあげています さあゴールは目前 ワールウィンドトップの座はゆずりません このまま入るかワールウィンドワールウィンド今ゴールしました 一位ワールウィンド 二位チューマイシュー そしてドッグオーワーの順です やはり強いワールウィンド 圧倒的な速さでトップを守りました。」

22:00 字幕「シンプソンからメリークリスマス」


【音声】

01:13 日本のサンタを紹介する男子児童(声:安達忍さん)。
台本にはセリフが2案記載されています。
「私は福の神、日本からやってきました 私は頭の後ろにも眼があるからみんないい子にしなさいよ」
「福を配る日本のサンタクロースです 私は頭の後ろにも目があって子供達がいい子でいるか見張ります」

最終的な音声は、2つ目のセリフを若干アレンジした、「幸せを配る日本のサンタクロースです 私は頭の後ろにも目があって子供達がみんないい子でいるか見張ります」になっています。

02:01 子供たちのジングルベルの合唱。
台本では、「走れソリよ 風のように 雪の中を軽く早く 《 》笑い声を雪にまけば 明るい光のハナになるよ」となっているところを、最終的な音声では「雪をけり 野山超えて すべりゆく軽いソリ《ホッホッホーッ》歌声も高らかに 心も勇むよソリの遊び」になっています。
このジングルベルには、数多くの訳詞が存在しているのですが、台本にあるのは日本で最初のジングルベルの訳詞と言われている、宮沢章二さん訳詞風。そして、最終的に採用されたのは、一般的に一番耳馴染みがあると思われる、当時のキングレコード所属ディレクターの共同ペンネーム:音羽たかしさん訳詞風。
ちなみに、シーズン6「スプリングフィールド・最期の日」で、フランダースほかスプリングフィールドの住民が「ケ・セラ・セラ」を大合唱するシーンの訳詞も、音羽たかしさん風だったりします。

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02:41 ホーマーの小言。
台本上は「《 》この学年何学年あるんだ?」となっているところ、冒頭の言葉にならない言葉の部分を表す《》内に大平さんの手で"ウー"と書き入れられ、またセリフの長さと画面の口の動きが合わないからか、~あるんだ?の後ろに、これまた大平さんが"もう"と書き入れています。

05:26 ホーマーのフランダースへの不満。
台本上は「フランダースの目立ちだがり」になっているのですが、大平さんの修正で"が"が消され、"め"になっています。

09:22 ホーマーの愛の言葉。
台本上は「分厚い財布にクレジットカードを持ってる男よか劣るけど愛してる」になっているところ、最終的な音声は「俺の財布は分厚くないしカードも使えないけどでも心から愛してるよ」になっています。

11:37 サンタの訓練。
1回目の「ホ・ホ・ホ…」の下に(元気)、2回目の「ホ・ホ・ホ…」の下には(なさけなく)という大平さんのメモがあります。

13:37 ツリーを自慢するホーマー。
「どうだ形もいいし立派なもんだろう」の、"もん"が大平さんによって消され、"ツリー"に修正されています。

16:15 ドッグレースを勧めるバーニー。
「ワールウインドってその犬 10倍一番人気 絶対確実だ」となっているところ、大平さんも書き込んで修正されていますが、現場で"一番人気10倍"と直され、さらに最後の"だ"がカットされています。
そのままでも全然いけそうですが、話し言葉としてより自然な形にするように工夫されていたことがよく分かる修正ですね。

17:49 犬の名前に反応するホーマー。
「バート聞いたか!今の名前 サンタの助っ人だと」の、"サンタの助っ人"の部分が、原音のまま、場内アナウンスされる名前である、"サンタズ・リトルヘルパー"に書き換えられています。
そのほかのシーンでも、台本上はすべて"サンタのリトルヘルパー"と記載されていますが、固有名詞(キャラ名)で今後も使用されるものからか、音声ではすべて"サンタズ・リトルヘルパー"になっています。

18:36 パティおばさんに反論するリサ。
台本の「ソレ、やめてほしいな…パティおばさんの目からみると欠点の多いパパでも私にとっては、たった一人のパパだもの 娘にとって父親は男の人の見本であり今後の人間判断の基準になる大事な人なのよ せめてパパの悪口をきくとグサッとくるって事だけ覚えておいて 姪っ子にゆがんだ異性感をもたせるのおばさんもイヤでしょ」が、画面欄に記載された第2案(原音に近い)である、よりセリフ量の多い=早口でまくし立てる、より頭脳派なリサを表現するセリフに変更されています。

20:21 落ちてる券を探すホーマーとバート。
「勝ち券落ちてたか?」となっているところ、大平さんが"勝ち券"の部分を消して、"アタリ券"に修正してあります。

20:44 ヘルパーを追い払う飼い主。
走るヘルパーに向かって、元の飼い主が石のようにも見えるボール(?)を投げるシーン、台本には特に記載がないものの、日本独自の演出で投げつける瞬間に"ポイッ!"というSEが付け加えられており(原音では無音)、石に見えなくする演出のようにも思えますし、暗めのシーンをマイルドにさせる効果が出ているようにも思えます。

20:52 ホーマーに話しかけるバート。
「《あー》パパこの犬連れて帰ろう」となっており、スタート時点で既にバートがホーマーを呼ぶときには、"オヤジ"を基本として、場合によっては"ホーマー"にするという決まりが出来ていたようですが、ここのシーンのように初期台本にはパパとの表記が出てくる部分もあり、大平さんの手で"パパ""親父"に修正されています。(原音では"Dad"呼び)
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ヘルパーがホーマーのところにやって来たシーンには、ホーマーのセリフとして「アラ」という書き込みが追加されています。

22:00 ファミリーの集合写真。
静止画になってからは原音は無音で、台本上にもなにも指示はありませんが、エイブじいちゃん(声:滝口順平さん)のエヘヘヘヘッ…という笑い声が入れられています。


【おまけ】

シンプソンズアフレコ台本の表紙に、シリーズを通じて使用されることになる、ファミリーのイラスト。
これ、原作者/製作総指揮:マット・グレーニング氏、製作総指揮:サム・サイモン氏の案を基に、ディレクターのデヴィッド・シルヴァーマン氏が、本国のスクリプトの表紙用に描き下ろしたものであり、日本でも同様に用いられているわけなんです。
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このイラストが、コナミアーケードゲームほかTシャツやフィギュア等々、多くの関連商品に使用されることになり、未だにデザインを調整したものが使用され続けている、まさにザ・シンプソンズ」を象徴するイラストといえます。

ちなみに、イラスト下の日本語版タイトルロゴについては、以前記事にしていますので、併せてご覧ください。
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