シンプソンズ・ファンクラブ・ブログ

「ザ・シンプソンズ」を日本で広めるために日本語吹替版のエピソードガイド、グッズを買えるお店の紹介、大平透さん使用のアフレコ台本の研究、等々を掲載しています。

大平さんのシンプソンズ台本:シーズン1「バートン将軍」

シーズン1、第5話「バートン将軍:Bart the General」February 4, 1990(日本初回放送:1992年10月3日、録音日:1992年9月10日)
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<以下、ネタバレになります>


【画面】(台本上の通信欄)

01:19 ◎英語そのままのノリで 最近の若い子は"オーマイゴッド"等英語のフレーズそのまま使うので…デュードマンは仲間に対する呼びかけ
音声欄にあるバートとオットーのあいさつ「YO(ヨォー)」を、原語版のセリフのまま使用したことについての補足。

11:06 家の前
場面展開時のシーン説明

11:25 字幕スプリングフィールド老人ホーム」

12:09 原音 ブラ 好色漢 タマタマ
エイブじいちゃんがテレビで聞き来たくない言葉リスト。

12:55 字幕「ハーマンの軍用品アンティーク」

14:00 原音 エルム通り
吹き替え版では"エルム街"と表現されていますので、その変更に対して。
ちょっと物騒かつ不気味を出すための、テレビ吹き替えならではのアレンジですね!

14:52 字幕「ネルソンを憎み恐れる者 バートの木の家に15:00集合」
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ここだけでなく、WOWOWFOXチャンネル)放送時の吹き替え用字幕と、DVD(配信にも流用)の吹き替え用字幕は、違うケースも多々あるので(※)、ぜひこのあたりの違いも注目してみてください。
(※WOWOWFOXチャンネル)吹き替え用字幕は吹替翻訳者の徐さんが、DVD吹替用字幕は発売時に字幕翻訳者の方が、それぞれ訳しているため)

16:00 軍隊の訓練
状況説明。

・18:18 ネルソンがゲームセンターにいます→先のセリフとくいちがうので変えました
バートにネルソンの状況を報告しに来るルイスのセリフが、前に登場していたミルハウスのセリフとダブっているため変更しているという説明。
大作系の外画は、吹き替え版のオフィシャルコントロールが進み(あと、一部の消費者からの字幕と言ってることが違う!という苦情により)、とにかく原音に忠実に、アドリブは厳禁、が主流になっている中、古き良きテレビ吹き替えは、テレビ番組としての全体のストーリー展開、視聴者のことをとことん考えて、こういう変更もしていたのです。

21:01 第二次世界大戦も入っていますが、日本とは考え方がちがうので省きました
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音声欄にある、戦争について視聴者に語るバートのセリフの一部変更についての説明。
エピガイのときにも紹介しましたが、上で挙げた吹き替えのオフィシャル化は、原則としてこういう場合も原語版のまま「第二次世界大戦」を入れることになるわけです。
大平さんも「吹き替えは日本人が観るもの。日本人が観て面白ければそれでいいんだ。」と語られていましたが、決してオリジナルの演出意図を破壊するということではなく、そのローカライズされる国の視聴者が楽しく観られることが一番であるので、その辺りの各国の事情も本国がもうちょっと理解してもらえるといいな、と思います。
(とにかくオリジナルに近いセリフで観たいということならば、字幕版という選択肢も用意されているわけですから)


【音声】

00:17 ホーマー「おやおや カップケーキの臭い?《 》大当たり!」が、"おやおや"の横に大平さんが"アヤヤ"と書き入れられ、《 》の中にも"オウ"と書き入れられています。

00:48 バートに大人なアドバイスをするホーマーのセリフ「油をさせばすべりが…」の上に、大平さんが"ユックリ"と書き込まれています。
結果、わが子に丁寧に教えようとしてる雰囲気がよく出てるシーンになっていますね。

01:04 ホーマー「ああそうだろ 成功の道は三つあるんだバート 努力 才能そして…《ウン》」とあるところ、最終的な音声では、"努力""才能"の間にもう1つ"そして"が追加されています。
これによって、ホーマーの口の動きとセリフ量がピッタリに。

・01:14 カップケーキをしめしめといただこうとするホーマーの笑い声として、大平さんが原音に忠実に《 》内に"ヘヘヘ"と書き入れられています。
この後に、リサからカップケーキを取り上げられて、原語版では"D'oh!"が入るのですが、当時はまだそれがホーマーのお決まりのフレーズとして認識されておらず、吹き替え版では"アラ"になっています。

01:32 オットーにカップケーキをおすそ分けするリサのセリフ、台本上は「《 》はい オットーの為に一つとっといたの (食べて)」とあるところ、時間の都合からか"一つ"がカットされています。また、後にも余計に作ったカップケーキがあることが分かるので、そういう意味でもカットになったのかも?
ちなみに、原語版では"Here, Otto. I made an extra one for you."であり、直訳すると「オットー、はい。おまけに作っておいたよ」になることから、台本のカッコ内にある"食べて"はオリジナルの追加であることが分かります。リサのしっかりさが伝わってきて、素敵ですね。

01:55 リサに許しを乞うバート、台本上は「感情的になって思ってもない事言っちゃったんだ」となっているところ、最終的な音声では、語尾に"よ"が追加されています。

02:44 ネルソンの子分に立ち向かうバートのセリフ、台本上は「だからケーキを返さねえとお前をぶン殴るって事だよ」とあるところ、最後の"だよ"がカットされています。
時間の都合もあるかと思いますが、パシッと言い放つイメージからして、"事"だけで終わると、より歯切れがよくなりますね。

03:00 ネルソンに持ち上げられて抵抗するバート
台本上は「バート《 》」のみですが、最終的には「コンニャロコンニャロコンニャ…」という音声になっています。

03:35 スキナー「《 》非情のベルだ」
"非常""非情"がかかっている、吹き替えオリジナルことば遊び。

03:58 バートの想像上でのネルソンとの対決。
ここでのネルソンのセリフ「くっちまうぞ」「飯の時間だあー」以外は、叫び声、笑い声部分は台本上ではすべて《 》のみ。
つまり、30秒以上、バートの堀さんとネルソンの安西さんのセンスでのアフレコというわけです。

04:56 生徒「(歓声)イエ― カッコイイー しぶーい」
リサに紹介されたバートにかけられる児童たちの歓声(ガヤ)もしっかり台本に。

05:07 生徒達「《ガヤ》ネルソンだ こわー かかわるなよ」
上と同様にこちらにも。

05:58 ホーマー「《アー》仕事なんてどうでもいい…」
マージに突っ込まれ方向転換し、泣き始めるホーマーのセリフの上に大平さんが"泣"と書き入れられています。

06:53 ネルソン「手をあげな」以降、ボコボコにされるバートの声は、こちらでも台本上ではすべて「バート《 》」のみ。

08:01 ケンカでもしたのかとバートに聞くホーマーの笑い声。
台本上には「ホーマー《 》」とあるところ、ここにも大平さんが"ヘヘッヘ"と書き入れられています。
この、ホーマー定番のヘヘヘ笑い、本国の声優:ダン・カステラネタ氏の低音かつちょっと裏返す感じの声を、大平さんが完全再現していて、本当に痺れます。

08:11 バスタブの中に座り込むバート「だめだこりゃ…」は台本上にはなく、原語版ではうなり声だけであることから、吹き替え版オリジナルのセリフであることが分かります。

08:46 マージからスキナー校長に報告するように言われたバートのセリフ、台本上「まっそれもダサイ一案だけど…」とあるところ、最終的な音声では"ダサイ"がカットされています。

09:27 ネルソンの特徴を想像するマージのセリフ、台本上は「でも勉強の方はあまりできないしょ?」とあるところ、最終的な音声では「それに勉強の方もあんまりできないでしょ?」に変更されています。
さらに、それに続くバートのセリフも、台本上は「かなり頭悪いよ」とあるところ、「頭悪い…」に変更されています。

09:58 サンドバックに食らいつくホーマー
台本上は「ホーマー《 》」のみのところ、大平さんが"イヤーッ ウーウーゥ"と書き入れられ、仕上がりは本編をご覧のとおりに!!

10:31 バートに必殺技を伝授するホーマーのセリフ「もしチャンスがあったらタマげりでとどめをさせ」とあるところ、"タマげり…"からが大平さんによって消され、"おタカラにケリを入れろ"と書き入れられています。
それに続いて、「タマげりこそシンプソン家に伝わる必殺ワザだ」と出てくるので、あえて前の"タマげり"を1つ消すことで、後の"タマげり"を強調させる効果があるのかなあと思っています。
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11:00 またしてもネルソンにやられるバートが見ていられないホーマー、台本上は「ホーマー《 》」となっているところ、大平さんが《 》"アアア"と書き入れられ、その後の、原語版では"D'oh!"となっているところを、「ホーマーの大決心」に続き"オウ…"と表現されています。(通称:初期D'oh!)
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11:22 親戚で一番タフなおじいちゃんについてのリサのセリフ「ホームに入れた時のケンカ凄かったじゃない」が、最終的な音声では、よりマイルドに「ホームに入った時のケンカ凄かったじゃない」となっています。

・12:09 タイプライターを打つエイブじいちゃんのセリフ、「一つ…ブラジャー 二つ…好色漢 三つ…タマタマ(きつめ)」とあるところ、
三つ目の"タマタマ"が、先に登場した表現の"おタカラ"に変更されています。

12:26 エイブ「私に言える事は一つ…」以降、一人称が"私"のところ、すべて"ワシ"に変更されています。
アニメならではのおじいちゃんキャラ表現、エイブに実にマッチしています!!

13:03 合言葉を言うエイブじいちゃん「早く開けろバカ者!」が、「早く開けろおバカ者!」に変更されています。
たった1文字、"お"だけの追加しただけですが、この"お"がもたらすマイルド効果がすごいこと!

13:07 エイブ「それでハーマン "富と名声を得た軍人"の今月号はもう入ったか?」が、「それでハーマン 今月の"軍人ライフ"の拡大文字バージョンは入ってるかい?」に変更されています。
原語版が"So, Herman, has the large-type edition of the month's "Soldier of Fortune"come in yet?"であることから、ここではあえてオリジナルに近い表現に変更されていることが分かります。

14:26 エイブ「あーそうか?パットン将軍だって少しおかしかったじゃないか ハーマンのイカれ具合はパットンの上を行く 絶対に負けんぞ」が、「あーそうか?パットン将軍だってちぃとおかしかったじゃんか ハーマンのイカれ具合はパットンの上を行くよ 絶対に負けんぞい」に変更されています。
共演者の方も絶賛されていた、大ベテランの滝口さんによるアドリブと思われます。

14:38 エイブじいちゃん「絶対に負けんぞい」発言を受けたバートのセリフ「負けん…!?」は、台本にも原語版にもない、吹き替え版オリジナルセリフです。

15:30 バートたちの行進の翻訳。
これまで登場してきた吹き替えソングは、翻訳できる部分はすべて日本語化されていましたが、今回の行進曲はタイトル自体が「Sound off」であるため、そこは訳さずそのまま使用されています。
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www.youtube.com

16:17 水風船の構造を説明するバート「《つまり構造上…とがった物に弱く…》(音ナシ)」
(音ナシ)という表記もあるように、原語版ではここにセリフはありませんが、吹き替え版オリジナルで追加されたことが分かります。

16:30 犬が弱いと聞いたバートのセリフ「弱いだ!?」が、「犬弱い!?」に変更されています。
何に怒っているのかがより明確なセリフになっていますね。

・ファン人気の高いエイブじいちゃんのセリフの1つ、「飛行機から押し出してもいい 崖からつき落としてもいい 海外へ送り出してジャングルの中で犬死させてもいい でもなぜかぶつのだけはいけないことになっている」
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原語版では、"You can push them out of a plane, you can march them off a cliff, you can send 'em off to die on some godforsaken rock, but for some reason, you can't slap 'em."

17:15 訓練中のハーマンの叫び。
北斗の拳」の次回予告ばりに絶叫されている千葉繁さんによるハーマン、最高です。

17:59 風船には天誅とあるべきとハーマン
原語版では、"Death From Above(上空からの死)"ですから、翻訳センス抜群です。

18:37 子分(1)「この"ドロドロ"うめェー」"ドロドロ"が、原語版に忠実に"スクイッシー"に変更されています。
このスクイッシーといい、初期のシンプソン家の食卓によく上がっていたオートミールといい、シンプソンズにはドロドロ系食品が多いこと!笑

19:39 エイブじいちゃんから風船爆撃を食らうホーマー
もちろん、ここも台本には指示は書かれていませんが、大平さんによって"アラー"と書き込まれています。
大平さんによるホーマーの"アラ~~~ッ!"、以降定番になりますね。

21:14 バート「ただし 自由と平和と正義の為に戦わなけりゃいけないこともあるけどね」
原語版では、"There are no good wars, with the following exceptions: The American Revolution, World Wer II, and the "Star Wars"trilogy."と、実在(架空を含む)の戦争名が出ていることから、画面欄にあるような配慮がされているわけです。

21:22 締めの挨拶でのバートのセリフ、「写真つきの本いっぱいあるから それじゃお休み ピース・マン!」が、「すっげえ写真も載ってるし そいじゃあねえ ピース・マン!」に変更されています。
出来うる範囲で攻めたセリフに、天下無敵の堀さんによるやんちゃな男の子キャラの演技が合わさって、ラストのセリフとしてしっかり決まってます!

22:34 エンディング 女①「しーっ」
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まさかのグレイシーフィルムのサウンドロゴに配役と吹き替え音声が!?
VHSやDVD(配信も)では、原音が流用されているのですが、本エピソードのWOWOW放送時にはここも吹き替えられていたのか、気になるところです。